GHCブログ

2014年06月13日

「分析は汗をかかずエレガントに」 倉敷中央病院の実データを徹底分析、医療マネジメント学会でGHC

会場は満員御礼、チケットもすぐに完売しました

会場は満員御礼、チケットもすぐに完売しました

 第16回日本医療マネジメント学会学術総会が6月13日岡山市内で始まり、GHCが同日、ケース分析などを行うランチョンセミナーを開催しました。今回の分析に用いたのは、国内でも非常に有名な倉敷中央病院(岡山県倉敷市)です。

 340人収容の会場に立ち見も出る満員御礼の中、米国グローバルヘルス財団理事長のアキよしかわが、同病院の実データをリアルタイムで分析しながら、病院の経営分析のポイントを解説しました。座長は、GHC代表取締役社長の渡辺幸子が務めました。

米国で病院産業の再編を促したDRGとIDS

 講演のテーマは「2025年に向けた医療変革時代の戦略的病院経営~倉敷中央病院の事例をもとに~」。倉敷中央病院のケース分析を行う前に、アキは米国の病院経営のトレンドについて、まず解説しました。

 入院の診療報酬を一日当たりの定額払いにする日本のDPC制度に対して、米国では一入院当たりの定額払いであるDRG制度を1980年代に導入しています。アキはDRG導入後の米国での経緯に触れた上で、「勝ち負けをはっきりさせる制度」と指摘しました。DRGの導入後は、病床・手術室稼働率を上げられないと病院の収益性が大きく低下し、「米国の病院数が、約7000病院から直近では約5500病院までに減った」ためです。

 DRGの導入は米国における病院産業の再編も促し、その中の大きな流れの一つとして、一病院の独立経営から、大学病院を頂点とした医療機関ネットワークが乱立する時代へと歩みを進めています。米国のこうした医療機関ネットワークは、ITを活用して連携する仕組みで、「IDS(integrated delivery systems)」と呼ばれています。

 日本では、DRGの実験的な導入が12年度から進んでおり、14年度にはこの対象が大幅に広がりました(参考記事『病院関係者500人が参加! GHC診療報酬改定セミナー』)。アキは、日本の診療報酬制度も米国のDRGに近づきつつあり、病院にとっては、医療の質を担保しながら、効率化を推進させることが不可避の状況だと指摘。米国のIDSのような病院産業の再編も視野に、将来予測を踏まえた経営展開の必要性を強調しました。

いかに外来・手術を分析できるかが重要に
「分析は切れ味鋭く、エレガントに」と語るアキよしかわ

「分析は切れ味鋭く、エレガントに」と語るアキよしかわ

 国内の急性期病院のトップランナー、倉敷中央病院のデータ分析に用いたのはもちろん、『病院ダッシュボード』。アキはまず、診療報酬の取り扱いがDRGに近い短期滞在手術の症例が、倉敷中央病院では全国平均に比べて多く、例として心カテの外来実施事例が心カテ実施症例全体の40%と全国平均でみても高いことから「日本がいつDRGになっても問題のないレベル」と評価。ただ、「手術分析」の機能を用いた分析を通じ、米国に比べると手術が終わってから次の手術までの時間が長く、午後5時以降の手術が多いことなどから、手術室の運営に改善の余地がある可能性を指摘しました。

 続いて「マーケット分析」や「外来分析」の機能を使い、周囲の医療機関からの紹介が多い一方、紹介元に患者を戻す逆紹介の割合が低い点を指摘。ここを改善して効率性を向上させられるかどうかに、「倉敷中央病院の次のチャレンジがあるのかもしれない」と話しました。

 このほかにも、「チーム医療Plus」の機能を使って加算の算定状況を確認したり、「DPC分析」を用いて後発医薬品の使用状況を確認したりしました。

 一連の分析を踏まえてアキは、今後は「入院だけではなく、いかに外来、手術を分析できるかが重要になってくる」と指摘。その上で、病院ダッシュボードのようなツールを活用することで、「分析に汗をかかず、切れ味鋭く、エレガントにやることが大切」と講演を締めくくりました。