GLOBAL HEALTH CONCULTING

実績詳細

わずか1年で収支改善し黒字転換へ、
「経営改善なくして急性期は守れない」

 三重県伊勢市の伊勢赤十字病院(一般651床・感染4床)は、日本赤十字社の最初の支部病院として1904年に開設され、救急・急性期医療を100年以上提供してきた歴史を持ちます。2012年には新病院に移転。急性期医療に用いる設備がより充実した半面、減価償却費が病院経営に重くのしかかりました。楠田司院長は「経営改善なくして、地域の急性期医療を守るための投資は続けられない」と考え、2017年度に本格的な経営改革に着手。使用薬剤の切り替えなどで収支が改善し、わずか1年間で黒字転換のメドが立ちました。


急性期病院に必要な投資と経営改善は車の両輪

楠田司院長(中央)と事務部の古川亨事務部長(右から3番目)、世古口幸久副部長(左から3番目)、小薮豊企画課長(左から2番目)、西村祐企画課主事(右から2番目)、GHCの湯原淳平マネジャー
(一番右)、太田衛コンサルタント(一番左)

 志摩半島で唯一、救命救急センターを持つ伊勢赤十字病院。伊勢湾や熊野灘に面し、急性期患者の流出が少ない地域において、救急患者を広域から受け入れる「三重県屈指の急性期病院」として知られます。訪問看護ステーションと介護老人保健施設「虹の苑」を運営し、地域住民に必要な介護サービスを提供している特徴もあります。

 伊勢赤十字病院が担う医療機能には以前、急性期から慢性期までが混在していました。しかし「急性期機能に特化すべき」と考えた村林紘二前院長が、近隣医療機関との機能分化・連携に注力。紹介率・逆紹介率は、どちらもほぼ100%に上昇しました。2012年には新病院に移転し、ドクターヘリの受け入れ体制や、術中MRI検査の実施体制などが整いました。

 楠田院長は2015年の就任時から、病院の経営改善に熱心に取り組んでいます。「急性期医療のための投資と経営改善は、いわば車の両輪。経営を改善しないまま、必要な投資を続けることはできない」(楠田院長)ためで、全職員にコスト削減などを呼び掛けてきました。

 しかし、同病院では病院移転後、減価償却費が重いことから単年度赤字を脱却することができずにいました。「これ以上赤字が続くと、『赤字体質』になってしまう」と危機感を抱いた楠田院長は、コンサルティング会社の利用を決断。2017年5月にグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)のコンサルティングを導入しました。

薬剤切り替えなどで年1.5億円のコスト削減

伊勢赤十字病院の外観。伊勢神宮を敬い高層建築を自粛する地域の精神にのっとった横長の病棟は、「医療福祉建築賞2013」を受賞している


 数多あるコンサルティング会社の中から、楠田院長がGHCを選んだ理由は、米国グローバルヘルスコンサルティング会長のアキよしかわの著書を読むなどして、「GHCが多くの病院のコンサルティングを手掛けていると知っていた」ためでした。

 2017年度のコンサルティングでは、診療内容をGHCが保有する全国約800病院のデータと比較する「ベンチマーク分析」により、診療科ごとの具体的な経営改善策を検討しました(診療科パスアセスメント)。担当したGHCマネジャーの湯原淳平とコンサルタントの太田衛は、「実のところ、伊勢赤十字病院では既に改善が進んでいました。そこで、比較対象の病院をカスタマイズし、特に経営改善が進んでいる病院のデータと比較することで、改善余地が残された部分を抽出しました」と話します。

 GHCのコンサルティングには、「医療の質の維持・向上」と「コスト削減」の両方を重視する特徴があります。例えば、血液内科でほぼ全症例に投与していた制吐剤を、他病院で使用されている低価格の薬剤に切り替えてはどうかと提案するに当たり、湯原は「患者の気持ち悪さが軽減されないのであれば無理に切り替える必要はありません」と強調。切り替えの判断を医師に委ねました。

 結果として、血液内科では制吐剤を必要とする患者全員に、低価格の薬剤が処方されるようになりました。高額の薬剤が処方される割合も、8割程度から1割程度に低下しました。その他の薬剤も、院内独自の改善活動として薬剤部・資材課・企画課が協働して切り替えを進め、併せて年間1億5000万円程度のコスト改善を達成しました。楠田院長は、「説得力があるデータがあれば医師は行動します。GHCのデータは当を得ていました」と話します。

事務部とGHCの相乗効果が成果につながった

 湯原は、経営改善を進める“人財”を楠田院長が育成してきたことが、コスト削減の要因ではないかと指摘します。「伊勢赤十字病院では、事務部の皆さんが、各診療科の医師にお伝えすべきことを熟知していました。その情報をコンサルティングに生かし、医師一人ひとりに合わせた提案ができました」(湯原)。

 一方、事務部企画課の小薮豊課長は、「私たちから医師にお話しするときに、『GHCから指摘があった件ですが…』と言えば分かってもらえるようになり、院内で改善を促しやすくなりました」と言います。同課の西村祐主事も、「コンサルティングと私たちの院内活動の相乗効果によって、成果が上がったのではないでしょうか」と振り返ります。

加算の最適化にチーム医療は欠かせない

GHCのコンサルティングが総合評価加算などを算定するきっかけになったと話す楠田院長


 伊勢赤十字病院では2017年度、入院基本料等加算の取得率アップによる収益向上にも取り組みました。例えば、総合評価加算(介護保険の被保険者が入院した際に、日常生活能力などを評価することが算定要件、入院中1回100点)の算定を開始。2018年2月には300回以上算定しています。

 「実は1、2年前、総合評価加算を算定できないか院内で検討したことがありました。しかし、看護師が評価を担当すると、業務負担がかなり増えると思って断念したのです」(楠田院長)。その加算算定を再び目指したのは、効率の良い評価方法を湯原が提案したためだと言います。「看護部への説明には事務部が汗を流しました。ただし、湯原さんからきっかけをもらわなければ、総合評価加算を算定しようとは思わなかったでしょう」と楠田院長は話します。

 湯原は、入院基本料等加算による収益アップの余地が伊勢赤十字病院にまだ残されていると言います。「看護部、薬剤部、栄養課がそれぞれ単独で動く場合と比べて、有機的に連携すると、取得できる加算が大幅に増えます。私たちが部門間の橋渡し役となって、今後もきっかけをつくっていきたいです」(湯原)。

黒字転換を糧に、さらなる経営改善を目指す

中央の油絵は地域住民の作品。移転前の病棟を描いている


 薬剤切り替えなどによるコスト削減と、総合評価加算などの算定による収益アップの両面から収支を改善させた伊勢赤十字病院。2016年度は2億円を超える赤字でしたが、2017年度は黒字が見込まれます。

 楠田院長は2017年度のコンサルティングを振り返り、「ベンチマーク分析はGHCならではのサービスでしたが、実は、どの会社を使うかよりも、どんなコンサルタントに担当してもらうかの方が重要だと私は思います。その点、湯原さんと太田さんは柔らかい物腰で、各診療科、部署、部門に抵抗なく入ってもらうことができ、満足しています」と言います。

 急性期医療のための投資と経営改善の「両輪」が回り始めた伊勢赤十字病院ですが、楠田院長は経営改善の歩みを止めません。「次の目標は、改善のPDCAサイクルを回すこと。この1年で職員の意識が変わり、医療材料の価格交渉なども協力してもらうことができました。成果が出ているので、『もっと良くしていきましょう』と呼び掛けていきます」(楠田院長)。

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