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2014年06月12日

【コンサルに聞く】認知症不明者1万人突破、病院経営の着眼点は?

 認知症が原因の行方不明者が、ついに1万人を超えた――。こんなニュースが先週、注目を集めました。警察庁は都道府県に身元確認対策を強化するよう通達。厚生労働省も保護された人の身元を全国で照会できる仕組みの導入に向けた検討を始めました。

※写真はイメージです

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「認知症800万人時代」

 報道によると、2013年に家族などから警察に届け出があった認知症が原因の行方不明者は、前年比715人増の1万322人。12年と13年の行方不明者で、今年4月末時点で所在が確認できていない人は258人に上るとしています。

 高齢社会の進展で認知症の高齢者は急増。NHKは「認知症800万人時代」とセンセーショナルに報じており、これからの社会に認知症対策は不可欠と言えるのではないでしょうか。地域社会では、認知症者がいる家族は玄関の出入口にセンサーを付けたり、自治体は見守り活動を強化するなど対策に乗り出している所もありますが、病院にはどのような影響があり、どのような対策が考えられるのでしょうか。

 認知症の増加による病院経営への影響について、GHCコンサルタントの湯原淳平に聞いてみました。

一般患者と同評価も今後の改定情報に注目

 「一般病院の関係者の間では実感があると思いますが、多くの病院で認知症患者の入院が増えています。一般の患者と比べて、認知症患者は徘徊するなどとても手が掛かりますが、同じ疾病で入院した一般患者と診療報酬での評価は同じです。そのため、現場ではこのまま同じ評価では大変だと思っている、というのが実情だと思います」

 手が掛かる認知症患者の入院について、病院の経営者はどのような点に注意すべきなのでしょうか。

 「2014年度の診療報酬改定で、診療録情報の『様式1』に『認知症高齢者の日常生活自立度判定基準』の項目が加わりました。これは、認知症患者の入院がどれだけ大変かを調査し、今後の診療報酬改定で評価するため、13年10月30日開催のDPC評価分科会で認知症に関する調査項目を様式1に追加すると決定したことを受けた対応です」

 「様式1」に「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」の項目が加わったことについて、湯原は次のように述べています。

 「今年からDPCデータには認知症のデータが確実に入りますので、認知症が在院日数、医療資源投入量、看護必要度にどのような影響を与えているのかをGHCとしても分析していきたいと考えています」

具体的な「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」(平成26年度DPC導入の影響評価に係る調査関連情報より)

具体的な「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」(平成26年度DPC導入の影響評価に係る調査関連情報より)

【引用記事】
認知症で不明1万人超 13年、所在未確認2年で258人(日経新聞、6/5)
認知症の行方不明者、持ち物でも照会 身元確認を強化(朝日新聞、6/5)
認知症行方不明者 全国で照会の仕組みを(NHK、6/6)

【参考URL】
平成26年度DPC導入の影響評価に係る調査関連情報
DPC評価分科会資料(13年10月30日開催)