事例紹介

2013年10月25日

【病院事例】足かせは外来リハ、連携強化が不可欠|砂川市立病院

病院名 砂川市立病院 設立母体 公立病院
エリア 北海道地方 病床数 498
病院名 砂川市立病院
設立母体 公立病院
エリア 北海道地方
病床数 498
コンサルティング期間 6か月
コンサルティング
  • ・地域医療ビジョン下の病床機能戦略

 砂川市立病院は、院内での病床機能の検討をスタートさせたのをきっかけに、地域の医療機関を巻き込んだ医療提供体制の見直しの議論に発展したケースです。2014年8月には同病院の呼び掛けで「中空知医療圏」にある7つの医療機関から約40人の関係者が顔を合わせ、それぞれの将来構想を話し合いました。こうした話し合いは今後も継続される見通しで、現場主導での連携と地域医療の再編を模索しています。

 理学療法士が圧倒的に足りない他病院との競合に頭を悩ませる都市部の病院とは異なり、同病院では連携先の医療機関も限られます。このため、むしろ単独で幅広い医療ニーズをカバーしなくてはならず、救命救急センターから地域包括ケア病棟まで、多様な医療機能を院内に整備してきました。ただ、地域の人口は今後も減少し続けるのが確実です。

 こうした中で「病床機能報告制度」が2014年にスタートしたのを受けて病院の将来像をどう描くかが大きな課題になりました。このときに同病院が打ち出したのが、亜急性期病室(16床)を地域包括ケア病棟に切り替えて1病棟(44床)に拡大するというプランです。

 一般病棟入院基本料は7対1を算定しているとはいえ、看護師や理学療法士など医療スタッフの不足は深刻です。地域包括ケア病棟の整備に踏み切ったのは、不足しがちな看護師の負担をやわらげるため、比較的緩やかな看護配置で対応可能な体制にするという側面もありました。

 ここで課題になったのがリハビリテーションの提供です。人手不足にあえぐ同病院では従来、〝浅く広く〞しかリハビリを提供できなかったのが実情です。地域包括ケア病棟を整備するには疾患別リハビリテーション料(脳血管疾患、運動器、呼吸器、心大血管)を届け出て専従の理学療法士を配置し、リハビリが必要な患者に「一日平均2単位以上(一単位20分)」を実施する必要があります。しかし、同病院では従来、一人当たり一日に0・74単位程度しかリハビリを提供できておらず、この基準をクリアするには単位数が大幅に足りませんでした。

足かせは外来リハ、連携強化が不可欠

 そこでGHCがリハビリスタッフの生産性を分析すると、2013年には一人当たり月に336単位を提供していたことが分かりました。診療報酬上の規定では、リハビリスタッフ一人当たり週108単位まで提供できることになっています。これらを一日当たりの単位数に換算すると、上限の18単位に対し実際には16単位弱を提供しているという計算です。

新たに整備する地域包括ケア病棟では、44床のうち12床をリハビリのニーズが高い整形外科に割り当てるというプランを立てています。しかし、理学療法士1人を配置してフル稼働したとしても、「一日上限18単位まで」の制約から、一日に2単位を提供できる患者は9人が限度で、整形外科の患者だけで毎日あと3人分のリハビリを何とかカバーする必要があります。

 そこで同病院が着目したのが外来でのリハビリ業務の見直しでした。連携先の医療機関が少ないこともあって、同病院では、退院患者に引き続き外来リハビリを提供せざるを得ない状況でした。実際、病床数が同じ規模の全国の病院と比べると、同病院でのリハビリは外来での実施割合が飛び抜けて高いことが分かりました。

 中でも運動器リハビリでは外来での対応が全体の3割程度を占めている状況です。7対1の算定を継続させるために平均在院日数の短縮を進めてきた結果、外来での対応が増え、これがリハビリスタッフの業務を圧迫していたとみられます。

 外来業務の負担を解消するにはどうすべきか―。同病院が打ち出したのは、ほかの医療機関との連携を一層強化することで、限られたマンパワーを入院リハビリに集中させるという青写真です。