事例紹介

2009年01月25日

複数の医療標準化策で12億円の収益増

病院名 旭川赤十字病院 設立母体 公的病院
エリア 北海道地方 病床数 520
病院名 旭川赤十字病院
設立母体 公的病院
エリア 北海道地方
病床数 520
コンサルティング期間 1年間
コンサルティング
  • ・診療科パスアセスメント
  • ・材料コスト削減
  • ・経営分析トレーニング

 DPC導入による医療の標準化は、病院によっては非常に大きな改善効果をもたらします。

 たとえば、北海道旭川市にある旭川赤十字病院は、病床数600床(精神科含む)と大阪府済生会吹田病院に比べて少し大きめの規模です。この病院では、紹介したクリティカルパスの見直しやジェネリック医薬品の採用などにより、12億円の収益増に成功しています。DPC導入は2006年6月と比較的早かったのですが、診療内容を統一させる動きがなかなか進まず、GHCがコンサルティングを行い改善に協力したケースです。

 なかでも目を見張るのは、胆石のクリティカルパスの策定により、平均在院日数を約12日も短縮できた事例です。

 この場合の入院日数は、特に術前日数を短くすることで大幅な短縮が可能となりました。その際に着目したのが「転科率」。「転科率」とは、患者が入院中に診療科を移る割合です。内科から外科への転科率は、同疾患の場合では平均20%程度なのですが、旭川赤十字病院では、78%と非常に高かったのです。これが高いということは、初診時の診療科間の連携が十分でない可能性があります。

 入院日数が長いと、1日あたりのDPC単価を下げてしまうので好ましくありません。旭川赤十字病院は、DPC導入当初、出来高で得られるはずの収益と比べると、症例1件につき、同疾患の場合平均でマイナス13万円になるという減収傾向でした。その大きな原因が、転科率の高さにあったのです。

 そこで、消化器内科と外科など、関連する診療科の間で、手術前に行う手続きを明確化し、両者の連携をスムーズにするよう環境を整備。さらに、全国標準と比較して投薬や注射に投じる医療資源が多かったため、これも標準化するよう努力しました。結果、1症例あたりの平均的な収益は、出来高時に比べてプラス7万円になるという健全な経営体質へと生まれ変わったのです。医療の質を落とさずに、収益を改善できた典型的な事例です。

 さらに、包括される医療資源の投入量、なかでも薬剤の使用をコントロールする一方で、もう一つの直接コストである医療材料の仕入れを抑える取り組みも行いました。特に後者の効果は大きく、取り組み後、半年で4500万円以上のコストダウンに成功しています。

 こうして、2006年期は単年度9億3000万円の赤字だったところを、翌2007年期に3億3000万円の黒字を叩き出すという劇的な結果が得られたのです。

 旭川赤十字病院は、事務職員の育成に対する意識が高く、DPCの分析ノウハウを自分達で習得したいと意欲的です。現在は、医事課、医療情報課、経営企画課から6人の選抜メンバーが戦略チームをつくり、データ分析やシミュレーションなどを行って病院幹部へ提言する流れができつつあります。