事例紹介

2020年07月30日

【病院事例】年間50以上のクリニカルパスを改善、部門横断型組織が原動力に|横浜市立大学附属市民総合医療センター

病院名 横浜市立大学附属市民総合医療センター 設立母体 公立大学法人
エリア 関東地方 病床数 726
病院名 横浜市立大学附属市民総合医療センター
設立母体 公立大学法人
エリア 関東地方
病床数 726
コンサルティング期間

 2021年に創立150周年を迎える横浜市立大学附属市民総合医療センター(市大センター病院)。2020年1月には、特定機能病院以外の病院としては全国で初めて、特定機能病院や大学病院本院のような高度な医療提供を評価する病院機能評価「一般病院3」の認定を受けています(詳細はこちら)。神奈川県内の病院としても初の認定になります。

 県を代表する国内トップレベルの高度な医療を提供する市大センター病院は、2018年7月に「病院ダッシュボードχ(カイ)」を導入。部門横断型組織である「クリニカルパス推進室」を原動力に、年間50以上のクリニカルパスを改善するなど、さらなる経営改善に邁進しています。

左から上田恵子氏、金井和夫氏、白濵隆太氏、三原忍氏


「クリニカルパスに収益上のヒントがある」

 クリニカルパス推進室は、2020年7月時点で3年目を迎えています。統括するのは、同院の院長補佐で医療・診療情報部長の西井鉄平氏。推進室のメンバーは部門横断型で集められており、管理部、医療・診療情報部、看護部のメンバーで構成されています。

 推進室のメンバーで、管理部医事課診療情報管理担当係長兼看護師長の白濵隆太氏は、「『クリニカルパスに収益上のヒントがある』との西井先生のお考えがベースにあり、パス改善を中心にデータ分析を推進しています」と、クリニカルパス推進室のミッションを説明します。

 現在、82のモデルパス化を実現しており、ターゲットとするパスの2分の1に達しています。管理部医事課診療情報管理担当兼クリニカルパス担当看護師の金井和夫氏は、「毎年、50パスの改善を目標としており、今年度は50以上のパス改善を見込んでいます」としています。


「診療情報管理士×看護師」の強みで成果(クリニカルパス改善の背景)

 推進室の最大の強みは、診療情報管理士と看護師がタッグを組んでパスの改善提案を行えることです。一般的によく見受けられるデータドリブンの改善活動では、データ分析としては問題ないものの、そのデータがあまりにも現場の実情にマッチしておらず、せっかくのデータを軸に現場の行動変容を促せないことです。

 同院では、「数字に強い診療情報管理士と、現場の実情を知る看護師が、どのような切り口でパス改善すべきかをじっくりと相談した上で提案できます」(金井氏)。

 横断型組織である強みは、入院で行う大腸内視鏡のCT検査を3~4割減、消化器内科の入院での採血やエックス線撮影を外来化することで年間400万円のコスト削減など、さまざまな形の成果に結びついています。


サクサク動きデータにたどり着きやすい(クリニカルパス複数改善を支援)

 日常的に「病院ダッシュボードχ」を使う同院の診療情報管理士は、「課題を知るためのデータへたどり着きやすく、操作もサクサク動く。マニュアルも以前より分かりやすくなって使いやすい」と評価します。

 「病院ダッシュボードχ」は、2017年12月にリニューアル。多機能でありながら分かりやすく、スピーディーに知りたい情報へたどり着けるようユーザビリティーを大幅に見直しました。一方、約600病院とのベンチマーク分析が可能で、他病院のデータと比較した課題も簡単に把握しやすく、「最初に課題のあたりを付ける用途での使い勝手がいい」(前出の診療情報管理士)ことが特長の一つです。

 トップレベルの高度急性期医療を提供し続けるには、「医療の質」の対になる経営の効率化は欠かせません。同院の健全経営の両輪の一助になるためにも、今後も「病院ダッシュボードχ」はさらなる進化を目指します。


解説を担当したコンサルタント 筑後 孝夫(ちくご・たかお)
tchikugoDPC分析、病床戦略などを得意とし、全国の医療機関における複数の改善プロジェクトに従事。社内の入退院支援センター開設支援(PFM:Patient Flow Management)のプロジェクトに参画するほか、社外では診療放射線技師学会の分科会員、研究会の世話人に任命されている。