事例紹介

2013年01月08日

経営改善の実現は新たな試みと 悪習慣の撲滅を徹底する覚悟を持つべき

病院名 足利赤十字病院 設立母体 公立病院
エリア 関東地方 病床数 555
病院名 足利赤十字病院
設立母体 公立病院
エリア 関東地方
病床数 555
コンサルティング期間 4年間
コンサルティング
  • ・診療科パスアセスメント
  • ・材料コスト削減
  • ・委託コスト削減
  • ・手術室効率性カイゼン
  • ・集患・地域連携

栃木県足利市にある足利赤十字病院は、他県からの来院者も多く、医療圏人口80万人の健康を支える555床の地域医療の中核を担う病院です。同病院は、2011年に全面移転し、患者のプライバシーを守り、快適な療養環境の提供をめざし、分棟型による一般病棟全室個室の新病院を設立しました。2010年9月から、弊社のマネジャー本橋大樹がコンサルティングを開始し、小松本悟院長と鷲見圭司事務部長のリーダーシップのもと、職員が一丸となり、さまざまな経営改善を実現しています。今回は、鷲見事務部長(写真)に、院内で改善を成功させていくための秘訣をお聞きしました。(文中、敬称略)

やるべきことをやり、提案していくことが重要

ー はじめに弊社にコンサルティングをご依頼してくださったきっかけから教えてください。

鷲見圭司事務部長 日本赤十字社が実施している全国事務長会議で、渡辺(幸子)社長のオペ室の可視化に関する講演を聞いて、その手法に驚かされたことです。その後GHCへすぐに電話をしました。当初は、渡辺社長は若くて美人で、ちょっと怪しい会社だと思っていましたから気軽に電話したのです(笑)。ところが、いざコンサルティングを依頼してみたところ、優秀なスタッフが多いすごい会社でした。あの時、思い立って、すぐに行動に移さなければ現在の足利赤十字病院はありませんでした。

ー 誠にありがとうございます。私も鷲見事務部長の行動力にはいつも驚かされています。

鷲見圭司事務部長 良い話にはすぐに飛びつくこと。自論の1つです(笑)。もう1つが、「やるべきことをやる」こと。もし、やる時間がなければ、人前で自分の考え(アイデア)を言うこと。言ってしまった以上やらなければなりませんからね。どちらが先でも良いのです。一番悪いことは、発言もしないし、何もやらないこと。

ー 確かに、鷲見事務部長は普段、お仕事をされているなかでそうした姿勢を実践されているように感じます。

鷲見圭司事務部長 これはね、かつてある赤十字病院で院長をされていた方が日頃からスタッフに言っていた言葉です。その院長は、「まず、知恵を出せ。知恵を出せない奴は汗をかけ。知恵も汗もかけない奴は辞表を出せ」と、言っていたそうです。「これだっ」って思いました。そこで、私流にアレンジをして、「アイデアを提案するか、できないならばやるべきことをやりなさい」とスタッフを指導しています。

信頼を構築するためには自分の考えを相手に話すこと

ー これまでさまざまな病院のコンサルティングに携わってまいりましたが、院長と事務部長の信頼関係が構築できている病院は、院内改革が円滑に行われる場合が多いです。足利赤十字病院はそのなかでも理想的な関係を築いていると感じていますが、どのようにそうした関係を構築したのでしょうか。

鷲見圭司事務部長 誰かに自分を理解してもらい、信頼を得るためには、まず自分の考えを相手に伝えるべきだと考えています。私は小松本院長に、これまでどんな場合でも自分の意見をきちんと述べるように心がけてきました。

ー おっしゃる通りだと思います。しかし、目上の立場の人に自分の考えを発言されることを難しいと感じる方もいらっしゃるかと思いますが、その点はどうでしたか。

鷲見圭司事務部長 小松本院長は、1990年に当院に着任されてから、内科部長などを経て22年間、当院で働いています。常に病院をどうしたら良くできるのかを考えている、とても一生懸命な方。そうした意味では、私も同じ気持ちでずっと一緒に仕事をしてきたため、とても意見が合います。私は事務部長を6年間やっていますから、院長が考えていることは大体わかりますし、院長も私が考えていることを理解してくれています。最近は、病院経営にかかわる取り組みを実施する場合、最終的な判断は事務部長に聞けと周囲の職員に言ってくれるようになりました。

ー 明確な同じ目標に向かっていたからこそ、現在のような強固な信頼関係を築き、経営改善を成し遂げられてきたのですね。

鷲見圭司事務部長 新病院を設計する際にも、院長室と事務部長室をドアでつないだのです。普段ドアは開けたままです。こうして多忙な院長に対していつでも相談しやすい位置関係になるように工夫しました。

リーダーシップをとるには嫌なことも言う覚悟が必要

ー 院内改革を主導していくうえで必要な資質はなんでしょうか。

鷲見圭司事務部長 経営を改善していくためには、新しいことをやり、悪いところは徹底的につぶしていく覚悟が必要です。そのためには、時には部下を批判することも言わなければなりません。職位が上がれば上がるほど、良いことがばかりではなく嫌われるようなことも言わなければならないのです。私には「10褒めて、1けなす」ことができません。むしろ、「10けなして、1褒める」くらいです。そうしたら嫌われてしまう場合もありますが、部下を指導していくためにはそれができないと結果を出せないと考えています。

ー マネジメントする立場の人間は良いことばかりではなく、厳しいことを言わなければならないのですね。叱られても正しいことを言われているからこそ納得し、ついてきてくれるのだと思います。

鷲見圭司事務部長 私は、間違ったことは言わないよう常に意識をしてきました。でも本当はね、自分があれこれと口を挟まなくても、病院がまわるようになってくれることが理想的。だから、それまでは、嫌われても良いから厳しく指導していこうと考えています。

薬剤師から事務部長への転身。「出すぎる杭」は打たれない

ー 鷲見事務部長は、薬剤部で薬剤師をされていたとお聞きしていますが、どのような経緯で経営戦略に関わるようになったのでしょうか。

鷲見圭司事務部長 薬剤部に在籍していた頃、事務部長から事務部で薬の購入など事務的な業務に携わってほしいと言われ、異動になりました。当初は、薬剤部との仕事の仕方が異なることに驚きました。事務部のスタッフは、自分で仕事のペースをつくっていたのです。しかしながら、薬剤師は、患者が目の前にいるため、自分で仕事のペースをつくることはできませんから。
入退院にかかわっていたスタッフは、月末月初は夜遅くまで残業するのですが、月中はスローペースで仕事をしていました。そこで、そうした仕事の効率の悪さを指摘し、均一のペースで業務を行うことを提案しました。

ー 時間外労働となり、余計な人件費もかかるため、業務の平準化を行うことは非常に重要であると思います。

鷲見圭司事務部長 そうなのです。だから自分では正しいことを言っていると考えていましたが、事務部のスタッフからは本当に嫌われました。今思えば、他部門からきて自分でもよく言ったなと思います。でも言い続けているとね、「そうかな」って周りも思うようになってくるのです。

ー その頃からご自身の信念を貫き、正しいと思うことを発言しつづけられていたのですね。

鷲見圭司事務部長 「出る杭は打たれる」って言うけどね、出すぎちゃえば案外打たれないのです(笑)。それに、当時は私のように上に物を言う人が少なかったため、院長からは評価していただいたと思っています。

すべての救急車の受け入れをめざして

ー 今後足利赤十字病院がめざす病院についてお話しいただけますか。

鷲見圭司事務部長 今後はさらに救命部門を充実させ、24時間、患者を断ることなく受け入れられるような院内・院外の体制を整えていきたいと考えています。現在は、救急で運ばれてくる患者をお断りしている場合もありますから、そうしたケースをなくすことが目標。そうすれば、自ずと一般病棟も埋まり、在院日数の短縮にもつながるはずです。超急性期病院として、まだまだ課題は多いですが、足利市の地域医療の中核を担う病院としての自覚を持って、さらに質の高い医療を提供していきたいと考えています。

ー お忙しいところ、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。


足利赤十字病院
〒326-0843栃木県足利市五十部町284-1
TEL: 0284-21-0121(代表) FAX: 0284-22-0225
http://www.ashikaga.jrc.or.jp/