事例紹介

2016年02月23日

【病院事例】済生会福岡総合病院から学ぶ複数会議の資料作成を効率化する手法―病院ダッシュボードユーザー会

病院名 済生会福岡総合病院 設立母体 公的病院
エリア 九州地方 病床数 380
病院名 済生会福岡総合病院
設立母体 公的病院
エリア 九州地方
病床数 380
コンサルティング期間 11年間
病院ダッシュボードχ
  • ・DPC分析
  • ・財務分析
  • ・マーケット分析
  • ・チーム医療Plus

 会議で必要な資料作成が山積み、どうすれば効率化できるのか―。全国トップレベルの手術稼働率と地域連携が成功していることなどで注目される済生会福岡総合病院(関連記事『職員と地域が選ぶ「最高の病院」へ、高水準の手術稼働率と地域連携を推進』)。同院が1月27日に開催した「病院ダッシュボード」のユーザー会で、効率的な資料作成方法などについて自病院の事例を交えてプレゼンテーションしました。

 「改善のポイントが瞬時に分かる」を開発コンセプトにした「病院ダッシュボード」を用いることで、同院は院内の複数会議からの要望に対して、効率的な資料作成を実現しています。プレゼンは同院用度課の中島聡氏、医事課兼経営分析室の佐藤明宏氏が担当しました。


済生会福岡総合病院・用度課の中島聡氏

激戦区を生き抜くツールとして活用

 済生会福岡がある福岡市は、急性期病院の激戦区。2キロ圏内に浜の町病院など5病院、5キロ圏内には福岡赤十字病院や九州大学病院など14病院があります。2008年からGHCとコンサルティング契約を締結し、13年に経営分析チーム・経営分析室を設置、病院の目標・指針を決定する会議「BSCコアメンバー研修会」の開始と合わせて、病院ダッシュボードを導入しています(関連記事『何かを改善するきっかけを創るツール、分析に時間かけず本質的な業務に集中できる』)。

 済生会福岡の14年度の地域シェアは6.6%。同年度の平均在院日数は9.9日(4年前から2.1日短縮)となっています。平均在院日数の短縮で入院1日単価は上昇しており、期間Ⅱ超割合とともに病院ダッシュボードのメーターは青のシグナルで、さらにシグナルの周りは金色になっており、これはトップ病院を示すものです。年間新入院患者数も1万1657人(4年前から1401人増加)と好調です。

 手術室の稼働率が高いところも同院の大きな特徴で、こちらも同じくシグナルの周りは金色になっています(関連記事『手術室の稼働率80%、済生会福岡総合の強さの秘密を分析―済生会学会でGHCが講演』)。紹介率も好調で、同院では周囲の医療機関からの紹介状に対する返書管理を徹底。返書管理の状況を「地域医療連携ニュース」として社内の掲示板で発表しています。どの科がどれだけ返書ルールを守れていないかが明らかになる仕組みです。そのため、14年度で紹介率は82.2%(4年前から10.4ポイント増加)、逆に年間外来患者は同年度で15万3023人(4年前から9536人減少)と減少傾向にあり、急性期病院としてのメリハリを明確にしています。

病院ダッシュボードを有効活用する3つの視点

 同院が病院ダッシュボードを活用しているのは、(1)経営戦略ミーティング(2)BSCコアメンバー研修会(3)診療会議(4)各種委員会―となります。様々なデータ作成依頼に対して、(a)病院データをアクセスなどで加工した資料を作成(b)ダッシュボードからデータをダウンロードまたは画面コピーをするなどして資料を作成―などしています。


済生会福岡総合病院・医事課兼経営分析室の佐藤明宏氏

 経営戦略ミーティングについては、参加者は院長、副院長、経営分析室で、毎月2回開催しています。内容は、内部環境や外部環境に関する資料、依頼された資料を経営分析室で作成し、プレゼンテーションを行っています。プレゼンでは、経営戦略ミーティングでも取り上げる、疾患別シェアとDPCII群医療機関要件について紹介しました。



 疾患別シェアは、「マーケット分析」の「SWOT分析」を用いることで確認できます。SWOT分析は、疾患別に医療圏ごとの症例数と症例シェアを確認できる機能です。DPCII群医療機関要件については、DPC俯瞰マップの係数分析で主に診療密度や外保連指数などを確認しています。

 医師、看護師、メディカルスタッフ、事務が年1回集まり、院外の会議室で事業計画策定に向けたディスカッションを行う「BSCコアメンバー研修会」でも病院ダッシュボードは活用しています。会議の中で仕様する病院の基本的な資料以外に、今後の病院運営を考えていく上で参考となる「MDCコード別の月別症例数」「救急車搬送症例割合」などの資料を作成しています。



 月1回の診療会議でも病院ダッシュボードを活用。厚労省からDPCデータが公表された後、過去のデータも用いて病床利用率や紹介、逆紹介件数などの資料を作成し、各診療科に報告しています。そのほかにも各種委員会から依頼された資料の作成とプレゼンテーションを行っています。例えば、リハビリ委員会から「総合実施計画評価料」の算定状況と他院の状況を把握できるような資料を依頼されれば、病院ダッシュボードの算定率やベンチマーク結果を用いた資料作成を行っています。



 全体的な傾向として、(1)自院の経年変化の確認(2)複雑な計算を要する項目(診療密度、外保連指数など)の確認(3)他医療機関との比較―に関連する資料作成の際には、病院ダッシュボードを用いることで、資料作成を効率化できることを示しました。

「ユーザー会2016春~新シーズン」スタート!

 当日のユーザー会では、GHCマネジャーの塚越篤子が講師を務めて、病院ダッシュボードの基本的な操作方法を確認したほか、中級編として病院ダッシュボードを用いたSWOT分析の手法などを学びました(関連記事『自病院の強みと弱みは何か、データに基づく正しいSWOT分析の要点』)。

 ユーザー会は3月16日の大阪会場から、中級編の分析演習のテーマを新たなに設定した新シーズンを展開いたします。大阪会場はすでに満員御礼となっていますが、3月22日の札幌会場以降はまだお席に余裕があります。ご興味ある方は是非、お早めのお申し込みをお願いします。