事例紹介

2015年09月11日

目の前の課題を発見し、将来像を模索 「ほかとは違う」病院ダッシュボード

病院名 埼玉石心会病院 設立母体 民間病院
エリア 関東地方 病床数 450
病院名 埼玉石心会病院
設立母体 民間病院
エリア 関東地方
病床数 450
コンサルティング期間 5年間
病院ダッシュボードχ
  • ・DPC分析
  • ・財務分析
  • ・マーケット分析
  • ・チーム医療plus

「ひと目で分かる」が最大の特徴

 病院ダッシュボード導入の契約を結んだのは2013年11月です。同じ系列の川崎幸病院(川崎市幸区)が先行導入していて、わたしと同じような仕事をしている担当から「とても使いやすい」と薦められたのがきっかけです。それなら、共通のフォーマットで同じ診療科の状況を比べられればと、わたしたちも導入を決めました。

 当院では、メディカル・データ・ビジョンとGHCが共同開発したDPCベンチマーク分析システム「EVE」を先に導入しています。同じようなシステムはこれ以上必要ないと最初は思っていましたが、病院ダッシュボードほかの機種とは全く違います。病院全体の状況を概観できる「DPC俯瞰マップ」など、視覚的に訴えてくる画面に皆でびっくりしたのを覚えています。例えば、「DPCケース分析」の機能から掘り下げて、ほかの病院に比べて平均在院日数や抗生剤の投与量がどういう状況か、ひと目で分かるのが病院ダッシュボードの最大の特徴だと思います。

 データ分析で課題解消の糸口を探そうとしても、何も手掛かりがなければどこから手を付けたらいいのかが分からず、すごく困ります。だけど、病院ダッシュボードを使うと、全国水準の中で自分たちの立ち位置がどの辺りなのか、課題が何かを一目で確認できるので、切り込みやすい。これが病院ダッシュボードの最大の特徴だと感じています。

 現在は、病院ダッシュボードで院内の課題を洗い出して、EVEで分析を深掘りするようにしています。例えば、抗生剤の費用が相対的に多い状況を病院ダッシュボードで確認して、症例ごとの状況をEVEで詳しく把握していく。裏を返すと、EVEでは院内のどこに課題があるのかを大まかに把握するには限界がある、ということです。

抗生剤投与なぜ多い?

 当院では、前立腺針生検のクリティカルパスの見直しに15年度から着手して、ここでも病院ダッシュボードを活用しています。まず、全国水準と比較すると、当院では抗生剤の投与金額が大きいことが分かりました。そこで、なぜこうなるのかを探ると、現場で先発医薬品のみを使用していて、後発医薬品は全く使用していなかったことが原因だと分かりました。先発薬のみを使用する理由を現場に確認しましたが、「特にこだわりはない」ということだったので、抗生剤をすべて後発薬に切り替えました。

 病院ダッシュボードで分析してみなければ、後発薬への切り替えの余地が現場にあることには気付けなかったでしょう。今後はほかの疾病でも同じような分析を実施する予定です。ドクターは、ほかの病院がどのような治療法を採用しているのかにすごく敏感なので、これからも分析結果を示しながら協力を呼び掛けていきたいと思います。

病院の将来像を見極めよ

 当院は17年秋に新築移転を控えています。その半年後には診療報酬と介護報酬の同時改定が予定されていますし、今後は移転後の将来像を具体化させなければいけません。わたしたちは引き続き急性期機能を高めていく考えですが、何をもって高度急性期や急性期の病院とみなすのか、国の方針がまだあいまいです。

 入院患者に医療資源をどれだけ投入したかを病院ダッシュボードでモニタリングしていると日によって変動がとても大きいですし、これだけを尺度にして高度急性期の病院を決めるのは難しいのではないかと感じています。ここは今後の流れを見守るしかありませんが、行政の行方を見極める上でも、こんな形で病院ダッシュボードがヒントを与えてくれます。

 当院は現在、DPC病院III群ですが、現状をモニタリングしてみると、現在の実績要件に組み込まれている「診療密度」と「手術指数」をどう高めるかが課題になりそうです。病院ダッシュボードでは、どのような症例をどれだけ増やすと、係数の評価がどう変わるのかも分析できるので、非常に助かります。


埼玉石心会病院
住所:〒350-1323 埼玉県狭山市鵜ノ木1-33
http://www.saitama-sekishinkai.jp/