事例紹介

2016年10月31日

【病院事例】ゴールありきのプロジェクトが成果出す、明和病院の病院ダッシュボード活用術|明和病院

病院名 医療法人財団 同仁記念会 明和病院 設立母体 民間病院
エリア 関東地方 病床数 55
病院名 医療法人財団 同仁記念会 明和病院
設立母体 民間病院
エリア 関東地方
病床数 55
コンサルティング期間 7年間
病院ダッシュボードχ
  • ・DPC分析
  • ・財務分析
  • ・マーケット分析
  • ・外来分析

 兵庫県西宮市の明和病院で9月28日、次世代型経営支援ツール「病院ダッシュボード」のユーザー会が開催されました。事例紹介は同院経理課の池田和代氏が講演。病院ダッシュボードを活用したクリニカルパスの見直しや係数対策などの事例を通じて、ゴールを明確にすることが成果を出すプロジェクトにおける重要な要素であるなどとしました。病院ダッシュボードの中級編では、「生産性を考える」をテーマにGHCコンサルタントが演習を行いました。

パス見直しで抗生剤投与額半減

 明和病院は、(1)パスの見直し(2)機能評価係数アップ――の大きく2つの用途で病院ダッシュボードを活用しています。

 パスの見直しではまず、病院ダッシュボードで要因分析をし、改善が必要な項目を掘り下げて調査します。その上で、具体的な分析結果をもとに医師にヒアリング。診療内容の見直しが可能か医師に検討してもらい、標準化(ルール化)を進めていきます。その際、コメディカルが関わる栄養指導や服薬指導・リハビリにおいて出来高で算定できる項目が漏れていないかを確認し、あわせてパスに盛り込めるかを検討します。

 例えば症例数が多い肺炎では、(1)平均在院日数(2)医療資源(3)リハビリ―の3つの観点から現場を分析。その際、最も着目したのは医療資源の抗生物質製剤で、他病院と比較して抗生剤の平均金額はやや高いものの、平均使用日数は短く、後発品使用割合も高いことが分かりました。分析から単価の高い抗生剤が使用されていることが分かり、重症度に応じた抗生剤の選択と投薬変更のタイミングのルール化を提案。結果、2万4000円だった抗生剤の平均使用金額は、1万335円と半額以下になりました(図表)。

(図表)パスの見直しで抗生剤投与額を半減させた

 同院では年2回のパス大会を開催しており、各部門からパス作成についてプレゼンする機会があります。こうした機会なども活用し、さらなるパス改善を推進する方針です。

経営の質のみにならず医療の質も向上

 機能評価係数アップでは、救急医療係数に着目。緊急入院患者に対して救急医療係数が低いことから、現場の医師2人、看護師2人、事務3人によるプロジェクトとして推進し、原因を分析していきました。

 病院ダッシュボードの「DPC俯瞰マップ分析」で緊急入院率を分析。さらに予定外入院のうち救急医療管理加算を算定した件数を確認するとともに、現場の医師やスタッフにヒアリングしていくと、算定基準を満たしているが算定されていないこともあることが分かりました。現状の業務フローで算定票がないため、適切に算定を確認する体制がないことが原因です。そのため、救急医療加算チェック票を作成し、看護師からの意見でもあった「トリアージ用紙」に区分欄を追加するなどの見直しを行いました。結果、見直しから2か月で加算算定額が倍になるなど大きな成果につながりました。

ユーザー会の様子

 同院では、今回の救急医療係数を含めた8つのプロジェクトが推進されており、それぞれ経営幹部が集まる経営企画会議で報告することになっていました。実際は大きな改善が見られた5つのプロジェクトに限定した発表となりましたが、池田氏は「やらざるを得ない状況になると改善成果につながりやすい。経営の質向上のみにならず、医療の質向上にもつながった」とゴールをしっかりと設けてプロジェクトを推進することの重要性を強調しました。

中級編、テーマは「生産性を考える」

 このほか、病院ダッシュボードの初級編と中級編を実施。初級編では、コンサルタントの薄根詩葉利が病院ダッシュボードの基本操作と活用イメージを解説。中級編では、マネジャーの冨吉則行が「生産性を考える」をテーマにした演習を実施しました。

コンサルタントの薄根詩葉利

 多くの病院で、現場の努力の分だけ収益に結びついておらず、「うちの病院の○○って…頑張っているけど…」と感じる場面も多いのではないでしょうか。その際、(1)周囲の病院と比較して自病院の○○の一人当たりの収益はどうか(2)○○の収益の目安はどれくらいにすべきか(3)そもそも生産性目標を設定しているか(4)最大の収益を確保するため○○の人員は足りているか。足りないなら何人必要か――などの視点で現状や目標値を確認すべきです。

マネジャーの冨吉則行

 そこで今回の中級編では、(1)トータルの収益から各職種の生産性を検討する(2)各加算や指導料から生産性を検討する―の2つについて、実際に病院ダッシュボードを活用して分析する演習を実施しました。(1)については、事前アンケートを実施して各職種の人数をヒアリング。その資料をご持参いただき、収益や加算の一人あたり金額を出していきました。

 演習では、参加病院同士で操作を教え合ったり、ディスカッションしたりなどと盛り上がり、まさに「生産性を考える」時間となりました。今後、しばらくは新テーマの「生産性を考える」で中級編を実施していきます。ご興味のある方は是非、直近のユーザー会の開催日時や場所をご確認の上、ご検討いただければと思います。