事例紹介

2016年04月07日

【病院事例】病院ダッシュボード活用して自院の改善点を可視化―DPCのII群となった済生会中津病院がユーザー会で事例発表

病院名 大阪府済生会中津病院 設立母体 公的病院
エリア 近畿地方 病床数 712
病院名 大阪府済生会中津病院
設立母体 公的病院
エリア 近畿地方
病床数 712
コンサルティング期間 6年間
病院ダッシュボードχ
  • ・DPC分析
  • ・財務分析
  • ・マーケット分析

 GHCの開発した次世代型病院経営支援ツール「病院ダッシュボード」を使って病院の現状や課題を可視化し、改善を進めることで診療実績が向上し、結果としてDPCのII群病院となることができた―。

 3月16日にGHCが大阪府で開催した病院ダッシュボードユーザー会で、大阪府済生会中津病院からこのような発表が行われました(関連記事はこちら)。

病院ダッシュボードの機能を活用し、「どこに改善の余地があるか」を可視化


今回、お世話になった済生会中津病院の皆様

 済生会中津病院は、大阪の中心である大阪駅・梅田駅にほど近い場所に位置する全712床の急性期病院です。近隣には北野病院など大病院が林立しているため、いわば「激戦区」にあると言えます。

 そうした状況の中では、総合的な経営戦略・病床戦略を立てることが不可欠です。同院企画部の川村和江氏は、「激戦区の中で、病院の経営を安定させるためには現状を可視化して把握することが重要」と痛感。病院ダッシュボードなどを活用して自院の強みと弱みを客観的に抽出し、積極的な改善提案を行うべきであるといいます。

 川村氏が注目したのは、病院のダッシュボードに搭載されている「患者エリア分析」機能と「マーケット分析」機能です。

 前者の「患者エリア分析」機能を用いることで、患者がどの地域から来院しているかを可視化できます。これにより、例えば「どの地域のクリニックと顔の見える関係を構築すれば、より紹介患者が増加するか」といった対策を適切に立てることが可能です。

 また後者の「マーケット分析」機能を用いれば、地域において自院がどれだけの症例をシェアできているかが分かります。さらに他院のシェア状況も把握できるため、客観的かつ定量的に、自院の強みと弱みを知ることができます。

 川村氏は、両機能を用いることで「自院(済生会中津病院)では、循環器内科と整形外科(特に筋骨格系疾患)などで高いシェアを持ち、かつ経年的にもシェアが高まる傾向にある」ことについて、可視化することで院内で共通の認識を持つことが可能であると述べています。共通の認識を持つことで、スタッフの結束力も高まると考えられます。

 さらに川村氏は、病院ダッシュボードの「俯瞰マップ」によって、自院の要改善点を把握することができると強調。俯瞰マップでは、GHCのコンサルノウハウから「ここは抑えなければいけない」と考えられる9項目(平均在院日数や1日単価など)について、自院が全国の病院の中でどの位置にあるのかがレーダーチャートで示されます。これにより改善すべき項目が一目で把握できるのです。改善すべき項目に対応した結果として、病院の診療実績などが向上し、2016年度の診療報酬改定で、済生会中津病院はDPCのII群病院に選定されています。

医療機関も積極的に機能分化を進めることが必要


3月16日にGHCが大阪府で開催した病院ダッシュボードユーザー会

 また同院企画部の鳥居大輔氏も、病院ダッシュボードなどの分析ツールを活用し自院の現状を客観的に把握し、課題の洗い出しと解決策の検討を進めていきました。具体的には、病院ダッシュボードを用いて「重症度、医療・看護必要度」と「在院日数」の視点から自院の状況を分析。その中で課題として浮上したのが「在院日数の短縮が思うように進まず、重症度、医療・看護必要度がどうしても下がってしまっている症例がある」という点です。

 ところで、厚生労働省は地域医療構想や病床機能報告制度など「病院・病床の機能分化・強化と連携」を推進する方策を打ち出しています。この厚労省のメッセージを受け、同院では、「医療機関が自ら機能分化に積極的に取り組んでいく必要がある」という考えが高まり、その第一歩として地域包括ケア病棟を設置し、機能分化を進めていくことを決定。具体的には、病院ダッシュボードなどを活用し、自院の強みである整形外科や循環器内科等の大きな診療科が改善することで、より大きな効果を得られることを再確認した上で、更に詳細な分析を行い、症例の選定や運用基準の整備を行いました。院内で運用について検討を重ね、状態が比較的安定した患者の転棟を進めることで、結果として一般病棟の在院日数が短縮し、重症度、医療・看護必要度も向上しています。

 鳥居氏は、「急性期病院として生き残るために、病床機能を整理し、一般病棟にその機能を集約することが必須である。機能分化を達成するために、あらゆる策を思案し、実施すること、そして、円滑に病棟運営を行いながらも機能分化へ向けた病床整理を行っていくために、様々なツールを駆使してデータ分析を行うことは重要」と強調しています。

機能評価係数IIの向上が、病院経営においてますます重要に


2016年度改定と病院ダッシュボードを活用した対策について解説するGHCマネジャーの冨吉則行

 ユーザー会では、GHCマネジャーの冨吉則行が「病院ダッシュボードを活用した2016年診療報酬改定の対策」について講演を行っています。

 2016年度改定では、病院・病床の機能分化を進めるために「重症度、医療・看護必要度の基準」が見直しました(C項目の導入や、7対1における重症患者割合の基準値が25%に引き上げられた)。あわせて10月分から生データ提出が義務化されます。このため冨吉は、「データの精度向上が不可欠」と強調しています。


GHCでは、2016年度改定で大きな見直しが行われた重症度、医療・看護必要度の分析ツールをリリース

 またDPC病院では、暫定調整係数からの置き換えがさらに進んでいる機能評価係数IIをいかに上げるかが、医療の質を上げるためにも、経営を安定化させるためにも重要です。ただし機能評価係数IIには、自院の努力で上げることが困難なものと、比較的容易なものとあります。後者の1つして救急医療指数・係数があります。この点について冨吉は、病院ダッシュボードを活用して救急医療入院を詳細にチェックすることが重要と指摘。具体的には、「救急医療管理加算は誰が判断しているか(医師任せにしてはいけない)」「救急医療管理加算の各項目に明確な基準はあるか」(実は病院によってばらばらである)などをチェックしてほしいと冨吉は求めています(関連記事はこちら)。

 また2016年度改定の重点項目の1つに地域包括ケアシステムの構築があります。その中でも、退院調整加算から大幅に組み替えられた「退院支援加算1では、病棟に退院調整を専従で行う看護師を配置することを求めるなど、メディカルスタッフの活躍が期待される内容となっています。このため病院ダッシュボードの「チーム医療plus」機能では、項目の見直しを進めていることも紹介されました。

 さらに、冨吉は200-300床台の病院における収益改善方策として次の2点を挙げ、「一部の例外を除いては(2)の方策を優先的に考え、部分的に(1)に該当する疾患群を見出すことが妥当」と強調しています。


200-300床台の病院における収益性改善のために必要な考え方

(1)医業収益の単価向上(主に一般病棟に関する対策)

 ▽単価の高いケースミックス(手術・リハビリテーション・救急)を取り入れる

 →ある病院では、こちらの戦略を取り、悪性腫瘍手術を高稼働させる事で高収益体質を実現

(2)固定費の削減(病床転換が主たる例)

 ▽固定費率の低いケースミックスを取り入れる

 ▽質に影響しないコストの削減

 また冨吉は「総合病院の体制への固執は、相応の稼働率で高単価疾患を集患できない限り、経営的に厳しくなる」とも指摘しています。

病院ダッシュボードの初心者向けに「入門講座」も準備

 またGHCコンサルタント兼カスタマーサポート担当で診療情報管理士の薄根詩葉利から「病院ダッシュボードの基本演習」が説明されました。病院ダッシュボードを導入して間のない病院の担当者や、人事異動などで病院ダッシュボードに初めて触れる方に対して、基本的な操作方法や分析を行うにあたってのポイントなどを分かりやすく解説しています(関連記事はこちらこちらこちら)。

 なお薄根は昨年暮れから今春にかけて開催した「病院ダッシュボード入門講座」の講師も担当しており、参加者から好評をいただきました。GHCでは5-7月に全3回の「病院ダッシュボード入門講座2016春」も開催しますので、是非、ご参加ください。



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