2013年10月25日
病院名 | 新潟県立新発田病院 | 設立母体 | 公立病院 |
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エリア | 甲信・北陸地方 | 病床数 | 478 |
病院名 | 新潟県立新発田病院 |
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設立母体 | 公立病院 |
エリア | 甲信・北陸地方 |
病床数 | 478 |
コンサルティング期間 | 3年間 |
コンサルティング |
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県立新発田病院は、DPC特定病院群(DPC病院Ⅱ群)でありながら一病棟を地域包括ケア病棟へ機能分化する決断をした事例です。
同病院は1885年、陸軍衛(えい)戍(じゅ)病院として創立、1953年に県立病院に移管、2006年に現在のJR新発田駅前に新築移転されました。同病院のある「下越医療圏」には急性期病院がなく、同病院では救急を断らないというスタンスで、地域の救急患者をほぼすべて受け入れています。これもあって、病床稼働率は常に90%台を維持。2012年度の診療報酬改定に伴うDPC対象病院のグループ分けでは、大学病院本院並みの診療機能があるDPC特定病院群(DPCⅡ群)と見なされ、Ⅲ群に比べて高い基礎係数を獲得できました。
同病院では今後もⅡ群に踏みとどまりたい意向ですが、診療密度(一日当たり出来高平均点数)の低さが弱点だと気付いていました。平均在院日数は約16日と長く、一般病床では入院症例の38・8%が入院期間Ⅱ(疾患ごとの全国平均の在院日数)を超え、これが診療密度を向上させる上で足かせになっていました。クリティカルパスを見直すことで在院日数を短縮させようとしましたが、なかなか進みません。急性期病院を退院した後の受け皿となる後方病院が地域に少ないことも大きな原因の一つでした。
平均在院日数の短縮には〝定番の〞病床稼働率の低下という不安も付きまといます。同病院では医療圏内の救急患者の大半を既に受け入れており、入院患者を今後、大幅に増やすことは期待できません。また、在院日数を短くして一日当たりの診療密度や単価が上がっても、DPCの支払いでは空床が増えればトータルでは医業収益が減る可能性もあります。急性期病院にとって、在院日数の短縮は両刃の剣になり得るのです。
病床稼働率のシミュレーションでは、▽すべての疾患が入院期間Ⅱで退院すると、病床稼働率は現在の91・5%から81・8%まで低下▽一般急性期の目標とされる9日まで在院日数を短縮させると52・0%まで低下―することが分かりました。
このため、急性期の病床数を維持しながら診療密度を高めるのは困難で、病床機能を再編する必要があると判断しました。
病床機能ごとの供給の適正化を目指す「地域医療構想」の策定に各都道府県が乗り出すのを背景に、「超高齢社会では、高度急性期医療よりも地域に密着した回復期などの医療ニーズが増加する」という見立てに沿って、急性期病床をニーズに見合った規模に縮小させ、一部を地域包括ケア病棟に切り替える方向で本格的に検討し始めたのです。
急性期病床の適正規模を明らかにするには、入院患者を地域包括ケア病棟に転床させるタイミングや、急性期病棟の在院日数をどれだけ短縮させるのかをまず決める必要があります。同病院では、「病床稼働率85%以上」の維持を前提に在院日数を短縮させた場合、地域包括ケア病棟をどれだけ確保できるかを試算しました。
「医療処置がなお必要な患者に対応し切れるのか」「看護師が疲弊してしまう」。一部の病棟を地域包括ケアに移行させる方針に、院内からはさまざまな声が上がりました。それもあって、機能分化は一気に進めるのではなく、2014年度の診療報酬改定で地域包括ケア病棟が制度として確立するのに先立って、前年に従来の亜急性期入院医療管理料(病室単位)でまず運用を開始。急性期を乗り越えた患者への対応の経験を積んでから地域包括ケア病棟に移行させることになりました。
患者からすると、地域包括ケア病棟では機能回復訓練や在宅復帰支援など、より適切なケアが受けられます。急性期の治療が終わってもすぐに自宅で生活するのが難しい独居や老老介護の世帯も多く、在宅復帰のためのケアを受けたり、環境を整えたりする時間も必要です。急性期と在宅療養の懸け橋的な役割を地域包括ケア病棟が果たせば、患者も安心して治療を受けられるはずだと同病院では見ています。
病棟の機能分化を進めて地域包括ケア病棟を整備できれば、病院側にも大きな恩恵がもたらされます。急性期を脱した患者を地域包括ケア病棟で受け入れれば、一般病棟の在院日数は短縮して診療密度は上がり、病床稼働率も高く維持できるのが最大のメリットです。在院日数を短縮できれば、7対1入院基本料の算定要件の一つである「重症者受け入れ割合15%以上」のクリアにも余裕が生まれます。
同病院では2015年現在、病床稼働率を90%以上に維持しつつ、平均在院日数を13〜14日にまで短縮させています。重症患者の受け入れ割合も20%以上と高く、「医療の質」と「経営の質」のさらなる向上を目指しています。
大学病院本院並みの急性期機能を持っていても、今や安泰とは言えません。堂前洋一郎院長は、「県立病院だから何とかなるという時代ではない。今後は危機感を持ち組織を改善し続ける必要がある。診療報酬の方向性を見据えると、DPC病床の平均在院日数をさらに短縮し、急性期病床を減らすと同時に、急性期医療を担っている看護師の一部を、24時間訪問看護などに振り向け、地域医療を支えることも視野に入れていく必要がある」と話しています。
広報部 | |
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