事例紹介

2013年01月15日

【病院事例】急性期病院のあるべき姿を求め、 信念にもとづく医療の提供に注力したコンサルティング|名古屋第一赤十字病院

病院名 名古屋第一赤十字病院 設立母体 公的病院
エリア 東海地方 病床数 852
病院名 名古屋第一赤十字病院
設立母体 公的病院
エリア 東海地方
病床数 852
コンサルティング期間 4年間
コンサルティング
  • ・診療科パスアセスメント
  • ・材料コスト削減

1937年に設立された名古屋第一赤十字病院は、75年にわたり名古屋市の地域医療を守ってきた高度急性期病院のコンサルティング事例です。総合周産期母子医療、救命・救急、および地域中核災害医療の各センター、地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院の指定を受けており、同病院で治療を受けたいという患者は後を絶ちません。弊社では、2011年からコンサルティングを実施しています。今回、マネジャー鈴木啓介が代表取締役社長渡辺幸子とともに、小林陽一郎院長(写真)に同院における人材活用のポイントや経営戦略に関する取り組みなどをお聞きしました。(文中、敬称略)

病院経営と文化の醸成

ー 貴院では、小林院長をはじめ、病院経営に携わっているさまざまなスタッフから診療報酬に左右されない、医療における「王道を進むべき」という信念がひしひしと感じられます。このような文化は昔から根付いるのでしょうか。

小林陽一郎院長 そもそも愛知県には県立の総合病院がないため、赤十字病院が県立病院の役割を担ってきました。自治体も、昔からそうした公的な医療を当院に提供してほしいと考えています。例えば、現在建設中のバースセンターに関しても、公的な役割を期待されていますし、地域に求められている医療の提供に注力する院内風土が自然と培われてきたのだと思います。

ー 東日本大震災の救援活動だけでなく、赤十字の日頃からのボランティアは本当に素晴らしいですね。

小林陽一郎院長 そうした地道な活動が患者の信頼を構築し、赤十字病院で是非治療をしたいという要望にもつながっているのだと思います。急を要さない手術の場合でも、赤十字で手術をしたいという患者もいるくらいです。だからこそ、地域でのあり方を認識して、急性期病院としての役割を大切にしたいと思っています。

ー ここ5-6年位だと思いますが、厚生労働省が優良病院のモデルを勉強し始めています。また、そのモデルを参考に診療報酬の点数をつけるようになってきたところもあり、質の高い医療を提供している病院がきちんと評価されるようになってきていると思います。

小林陽一郎院長 2012年度診療報酬改定は、私どもには追い風になっています。渡辺社長の資料の中に、今回の診療報酬改定で評価された病院の要件として「公益性」「急性期らしさ」「チーム医療」「地域連携」というキーワードが示されていましたが、それらは総て7つの基本方針に組み込まれており、当院の取り組みによく当てはまっていました。地域医療の中核を担う病院として、継続して取り組んできた周産期、小児科などの不採算の部門についても、係数としてしっかり評価されており、これまでの方向性と取り組みは間違っていないと確信しました。

現状での経営課題

ー 弊社のコンサルティングサービスを導入されて院内で何か変化はありましたか。

小林陽一郎院長 診療科ミーティングに若い医師が参加するようになりました。しかもただ参加するだけではなく皆真剣に話しを聞き、意見を言うようになったことに驚いています。経営戦略に対する院内の意識が明らかに変わってきました。

ー ありがとうございます。現状の課題はどういったことがあるでしょうか。

小林陽一郎院長 最も大きな課題は、看護スタッフが不足していることです。名古屋市内はどの病院も看護師が不足していると聞いています。そのような背景から、許可ベッド数の全ベッドを稼働することが困難な状況になってきています。今より数多くの救急搬送の患者を受け入れるためにも、看護師を採用して、余剰ベッドをうまく活用できないかと考えています。

ー 貴院ほどの大規模病院で看護師が不足しているのでしたら、東海地区全体で看護師が集まらないのではありませんか。

小林陽一郎院長 そうだと思います。病床稼動率を上げていくためにも看護師の増員は不可欠。それが我々の来年度のキーポイントです。また同時に、今後は職員が働きやすい環境を整備していく必要があります。

ー 医療スタッフの充実などを通して、どのような医療の提供をめざしていきたいのでしょうか。

小林陽一郎院長 当院の手術件数は年々増加しており、昨年は7,000件を突破しました。効率性も以前、分析していただいたデータを参考に、ぎりぎりまで上げています。しかし、現在の設備では、これ以上手術件数を伸ばすことは難しいと考えています。今後は、手術室を増やすことも視野に入れ、対策を検討していく予定です。手術への需要はあるため、増室する投資は十分担保できると考えています。手術を多く受け入れることは、急性期病院としてあるべき姿だと考えていますから、手術件数をさらに増やしていくことこそが我々の進むべき道です。

ー 手術を増件するということでしたが、麻酔科の医師数は足りているのでしょうか。

小林陽一郎院長 当院では、外科の医師が安心して手術に臨めるようにするためにも麻酔は全て麻酔科管理です。現在、麻酔科医師は確保できていますが、さらに増やしていきたいと考えています。麻酔科は女性医師が多いため、時短勤務にも対応していくためにも人数を確保していなければなりません。

人材活用の視点から見たチーム医療の在り方

ー 適材適所に人材を配置するという人材の活用という点では、看護部長を副院長に据えて、ベッドコントロールをしていると伺っています。看護部長が副院長になる等の積極的な人材活用の取り組みは、今後のスタンダードになっていくのではないでしょうか。

小林陽一郎院長 そうです。看護部長が副院長になることによって、ベッドコントロールもしっかりと管理できますし、看護師を募集する際にも、看護部長が副院長だというメッセージ性は非常に強いです。

ー 「赤十字病院」は、国内外でのボランティア活動などを通して知名度が高く患者を集めるブランド力があります。それが人材活用に影響を及ぼしている側面はありますか。

小林陽一郎院長 それが影響しているかは定かではありませんが、ありがたいことに医師はたくさん集まってくれています。後期研修医もしっかり残ってくれており、病院活性化の原動力になっています。

ー 医師数を確保することは医療の質を担保していくうえでも大切だと思います。

小林陽一郎院長 病院の利益を上げることも大事だけれど、医療の質をいかに上げていくのかを考えていくことも大変重要だと考えています。そのためにも人材活用とチーム医療の強化は欠かせません。現在は大部分が院内処方ですが、院外処方にシフトしていこうと考えています。これは、薬剤師のマンパワーを病棟で活用し、薬剤師の業務の一旦を担っている看護師業務の軽減を図り、本来の業務に専念できる環境を整えたいからです。これは看護師のみならず医師の業務量の軽減にもつながっていきますし、今後はさらに医療秘書等他職種のスタッフを積極的に活用していく予定です。

ー お忙しい中、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。


名古屋第一赤十字病院
〒453-8511 名古屋市中村区道下町3丁目35番地
TEL 052-481-5111 FAX 052-482-7733
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広報部
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。