2009年03月23日
病院名 | 小牧市民病院 | 設立母体 | 公立病院 |
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エリア | 東海地方 | 病床数 | 558 |
病院名 | 小牧市民病院 |
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設立母体 | 公立病院 |
エリア | 東海地方 |
病床数 | 558 |
コンサルティング期間 | 6か月 |
コンサルティング |
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年間4億円という改善効果をもたらしたのは、「増減収に限らず、必要な医療は行う」「安易な在院日数の延長はしない」という一貫したスタンスと、何事にも院内一丸となって取り組むという組織風土でした。そして何より、小牧市民病院にとって大きな成果だったのは、在院日数の短縮によって、救急医療の強化が実現したことです。今回は、病院長の末永裕之先生と、DPC対応を中心的に進めてこられた望月盈宏副院長、内藤和行医局長にお話をうかがいました。(文中敬称略、インタビューは2009年3月、役職等は当時)
–今回は、改めて振り返りのような意味で、これまでの取り組みに対するご感想などをお聞かせいただければと思っております。
内藤和行医局長 特別なことは何もやっていないと思うんです。院内がまとまって行動する体質といいますか、不協和音が少ない。病院の方針に素直に従ってくれるので、普通のことを普通にやっただけというのが正直な感想です。
–最初の一年間で、各診療科をまわらせていただいて、「DPCパスアセスメント」として診療内容の見直しを支援させていただきましたが、みなさん、非常に反応よく聞いてくださった印象があります。
望月盈宏副院長 なかには反発する人もいましたけれどね(笑) でも、DPCの導入を推し進める上での障害にはなりませんでしたね。むしろ、納得して協力してくれた。もともと部長同士の仲がよくて、診療科間の交流もいいという組織風土もありますし、診療科ごとに見直しを行うことで競争意識が起こったこともよかったのかもしれません。
ー各診療科をまわる際に、毎回、同じ話もあるにもかかわらず、望月先生や内藤先生が同席してくださったことが非常に心強かったです。「あなたたちに任せたよ」と、われわれに任せていただけるのは光栄ですが、先生方が同席してくださり、院内の方向性を示してくださったのはとても大きかったです。
望月盈宏副院長 医師に対する動機づけが多少なりともできたのであればよかったです。でも、それよりも、もともと人間関係が良好な上に、院長が先頭に立って方向性を示してくれたのがよかったのではないでしょうか。
内藤和行医局長 そうした効果についてはあまり自覚していないのですが、DPC委員会を立ち上げて、委員長になって、各診療科の研修をやってもらうときに、各科の人たちと価値観を共有する努力をしました。私は血液内科医で、自分の専門外の科についてはわからない部分もあります。しかし、伝えるべき共通項は見えてくるので、そういった部分は強調するようにしました。
ー「増収減収にこだわらず、必要な医療はやってください」と一貫しておっしゃっているのが印象的でした。そのため、各診療科も受け入れやすかったのではないでしょうか。
内藤和行医局長 医療の質を高めるという点では、コストパフォーマンス以前に、医者としての患者さんに対する取り組みや考え方が僕らにはあります。そういう意味で、質をなおざりにしたり、医療従事者の負担が大きくなっては長続きしません。経営効率だけではなく、患者さんにメリットがあり、医師や看護師の労力的にもメリットがあり、なおかつ、やる気を起こさせる仕組みでなければならないと考えています。
ー在院日数や医療資源の使用状況など、われわれが行ってきた報告はこれまでになかった類のものだったのではないかと思いますが、他の診療科、他の病院と比較した情報というのは、先生方の間で違和感はありませんでしたか?
内藤和行医局長 いえ、ありませんでした。それよりも、新しい情報が入ったという感じですね。
ー結果的に年間4億円ほどの改善効果が出ましたね。7対1入院基本料などの係数の恩恵を受けて大きく増収するケースはあるものの、純粋にこのような大きな効果が出るのは珍しいと思います。
内藤和行医局長 当院の医療機関別係数は「1.0677」でしたから、係数に頼っていたわけではないですね。
ー調整係数が低いということは、DPC導入以前からDPC対応されていたともいえますね。
内藤和行医局長 そうですね。在院日数のコントロールやパスの見直しなどにはすでに取り組んでいました。
内藤和行医局長 一番大きかったのはジェネリックでしょうか。1億円の成果がありましたよね。
ーあとは単価を下げなかったことですね。在院日数の安易な延長を決してとらなかったことが大きいと思います。貴院ですら稼動が少し落ちたので、院長先生にとっては多少の焦りがあったと思います。
内藤和行医局長 もともと入院期間Ⅱを超える割合はそんなに多くなかったものの、DPC導入後、5%ほど減少しましたよね。その結果、少し稼動も落ちたとはいえ、当院の場合、空きベッドが増えることを恐れていないんです。というのは、もともとが100%を超える稼働率で、平均在院日数が短くなって少し下がった今でも95、6%という状況です。ですからベッドが空くことについてはまったく心配しませんでした。結果、救急受け入れが非常に好転しましたし、新入院患者数が1100人台から1200人台に増えました。患者さんにとってもメリットが大きいと思います。
ーベッドの回転が速くなったことで、看護師さんたちの状況はいかがでしょうか。
望月盈宏副院長 苦情を聞くことはないですね。前と変わらないと言っています。
内藤和行医局長 職員の疲弊についてはやはり非常に気をつけていまして、人を増やしました。看護師数は定員を充足したうえに嘱託の人数も今までで一番多いです。そのため、薬剤費などの経費は減っている一方で、人件費については一気に10数%増えていますが、それ以上に収入が増えました。DPCになって確実に全体の仕事量は増えていますが、その分人も増えていますので、一人当たりの仕事量はそんなに増えていないはずです。当院は、県下で一番看護師さんの離職率が低いんですよ。
ーそれは素晴らしいことですね。
内藤和行医局長 今後の課題は、入院時医学管理加算の取得も含めて、紹介・逆紹介を強化すること。一番のネックは小牧市には二次的病院が少ないので、病診連携、病病連携の輪を広げていかなければいけません。
望月盈宏副院長 今、ソーシャルワーカーたちが一所懸命に各後方病院への退院調整を行っています。そうした努力が今後もより必要になってくるでしょうね。また、年に一回、小牧市、岩倉市、春日井市など6つの医師会の代表と病診連携会議を開催して親睦を図っているほか、月に一度、「尾張臨床懇話会」を当院で主催しています。こうした取り組みを改めて強化していかなければいけないと思います。
ーそうですね。同時に、出来高部分をいかに強化するか、ですね。
内藤和行医局長 外来を含めて、システムを変えていく必要がありますね。ただ、病院は利益ばかりを追求しても仕方ないと思うのです。経営が良くなったとしても、医者としての満足度や患者さんにとってのベネフィット、地域医療への貢献などがなければ、一体、何が残るのか。今までも特別なことをやってきたわけではなく、当たり前のことをやってきたのみですが、今後も、自分自身が医師であること、当院が地域の基幹病院であることを念頭において、職員の人たちと一緒に取り組みを続けていこうと思っています。
末永裕之院長 GHCに依頼したきっかけは、コンサルティング契約をさせていただく以前に、アキさん(GHC会長・アキよしかわ)の話を数回聞いていたこと。講演のなかで、「財政的に豊かな時代であれば、国民皆保険で出来高払いの日本の医療制度は一番いい制度だった。ただ、財源が不足し包括にせざるを得ない状況になり、アメリカではDRG/PPSからManaged Careになったが日本では何ができるかを考えていかなくてはならない」という話をされていて、非常に納得したのです。
末永裕之先生
一方で、自治体病院の一番の弱点である事務系の弱さをカバーするために、きちんとしたコンサルタントに相談する必要があるのではないかと以前から考えていました。院内で人材を育てることももちろん重要で、本庁採用とは別に数年前から事務職の病院採用を始めていますが、育つまでには時間がかかります。院内では限界があると考えていました。
数多あるコンサル会社のなかからGHCにお願いしたのは、具体的な形でデータを見せてくれたことが大きいですね。そして、全社連(全国社会保険協会連合会)のデータを持っていて、分析を行い、書籍まで出しているという点も決め手の一つでした。
実際にコンサルティングを始めて、ベンチマークデータを提示していただきながら、理詰めで進めていった結果、抵抗もなく、院内各部署の協力も得られ非常にいい具合に進んでいったと感じています。平均在院日数も平成19年度が13.3日で、昨年7月から今年2月までの平均は11.9日。ただ、最初のうちは在院日数が短くなったことで、10%程度、病床が空き、平均単価の増加のみではカバーできずに心配した時期もありました。しかし、一般病棟の病床が空いた結果、救命救急センターにもゆとりが出たことで、救急を断ることが極めて少なくなりました。救命救急センターを持つ病院としての正しいあり方に戻ってくれたということですね。
今後は、さらに医療の質を高めていくという方向に進んでいかなければならないと思っています。在院日数を短縮してベッドに空きが出た結果、当院の受診を希望されている患者さんが多くいることがわかりました。高度医療、救急、がん診療という3つの柱のうち、救急をおろそかにしてはいけないことを再認識するきっかけにもなりました。いろいろな分析をしていただいたことが、今後の病院の方向性を考えるうえでも非常に役に立ちました。これからも経営的側面を支えるパートナーとして、長いスパンでお願いできればと思っています。
広報部 | |
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