2010年05月10日
病院名 | 福山市民病院 | 設立母体 | 公立病院 |
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エリア | 中国地方 | 病床数 | 506 |
病院名 | 福山市民病院 |
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設立母体 | 公立病院 |
エリア | 中国地方 |
病床数 | 506 |
コンサルティング期間 | 1年間 |
コンサルティング |
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人口約45万人の福山市で、福山医療センターとともに、市内で2箇所の400床規模の医療機関として、地域医療を守る福山市民病院。グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では2009年6月からコンサルティングを開始し、前院長の浮田實先生、現院長の高倉範尚先生の強力なリーダーシップの下、09年から10年の間で年換算8億円の収益増を果たしました。コンサルティング導入前後について、プロジェクトリーダーのGHC相馬理人が、高倉先生にうかがいました。(文中、敬称略)
ー まずは、コンサルティングをご依頼くださったきっかけから教えてください。
高倉範尚先生 昨年1月に当院に赴任して、院内を見渡したところ、分析をできるスタッフがいなかったので、ぜひ、市民病院のデータを分析してもらいたいと思ったのが最初ですね。良いところ、悪いところ、そして病院全体や診療科別の全国の病院とのベンチマーク…など、とにかく現状を知りたいと、前病院でもお世話になっていた相馬さんに連絡したわけです。
ー 分析担当の方はいらっしゃらなかったのですか?
高倉範尚先生 いえ、分析はしていたものの、出来高収入とDPC収入の比較といったごく限られたデータしか出ていませんでした。全国自治体病院協議会に入っているものの、自治体病院間での比較が出るわけでもないし、この状況は良くないだろう、と。
ー それでは、ご依頼のときに、われわれに最も期待してくださったことはベンチマークでしょうか?
高倉範尚先生 そうですね。経営は二の次と言って良いのかはわかりませんが、質の高い医療、今よりもより良い医療を行うためには、DPCデータを使ってベンチマーク分析を行い、自分たちのポジションを知ることが大事。入院期間Ⅱ超えの割合や抗生剤の使用状況など、指標はいろいろありますよね。標準以上の医療を行えば、経営は後からついてくるはずなので、データを直接的に経営に使おうというつもりは今でもないんです。 前病院では、二次医療圏のなかでのMDC6別の症例数の比較やSWOT分析などのデータを出していました。ところが、当時の当院は、DPCに入ったのは2008年で準備病院の頃からDPCデータを出しているはずなのに、そういうデータが一切なかったわけです。実は、赴任した直後に、市民病院の現況について、患者数や手術件数の推移から医療圏内でのマーケットシェアなど、かなり網羅的に分析して、院内で講演を行ったんです。
ー すごいですね。かなりインパクトがあったのではないでしょうか。
高倉範尚先生 ドクターにしても、コメディカルにしても、やはり他院との比較は特に興味を持って聞いていましたね。
ー コンサルティングを始めさせていただき、各診療科を回って、ベンチマークデータをお出ししたところ、皆さん非常に前向きに捉えてくださった印象がありました。
高倉範尚先生 前院長の浮田先生が医療の質の分析に非常に興味を持っておられて、「医療の質を高めることが、これから病院が生き残っていく上で大切」ということを十分に理解されていました。余談ですが、2009年に浮田先生が提示したキャッチフレーズは「一歩前へ」。医療内容をもう一歩上げよう、あるいはもう一歩前に行って患者さんのことを知ろう、と。
ー その考えがまさに浸透していたのかもしれませんね。分析をさせていただいた当初、まずびっくりしたのは、予想に反してといったら失礼ですが、治療内容の標準化がかなり進んでいて、全国でもトップレベルの位置づけにあったことです。さらに、診療科を回ってヒアリングをさせていただくなかで、回転の速い仕事に疲弊することもなく、ネガティブになることもなく、飄々とトップレベルを走っていらっしゃって、皆さんがさらなる改善意欲も持っていらっしゃることに驚きました。いずれの診療科でも、必ず高倉先生に立ち会っていただき、先生からも「自院の位置づけを知ることが大切なんだ」というメッセージを伝えてくださったことがやはり非常に良かったなと感じています。
高倉範尚先生 確かに皆、ベンチマークのデータに非常に興味を持ってくれて、なおかつ、自分たちが標準を下回っているものは改善していこうという気概を持ってくれています。診療内容の標準化だけではなく、材料コストに関しても取り組みの効果が上がりましたよね。
ー 材料に関しては、先生のトップダウンと各診療科の理解、そして、用度担当の協力という三拍子が揃ったのが非常に強力でした。当初は商品を切り替えないコスト削減を目標としていましたが、さらに一歩進んで、切り替えに関しても、進んで工夫してくださいました。その結果、数ヶ月の取り組みで年換算5,000万円以上と、非常にスピーディに大きな効果が出ました。当然、効果の大きい項目から始めたわけですが、他の項目でもまだ改善余地が大いにあると思います。
高倉範尚先生 材料の見直しにしても、現場のドクターの納得、協力がなければ絶対にできません。これまで使ってきた感触がありますから。納得を得るためには、やはりデータが重要で、さらに、実際に使ってみて違和感がなければ切り替える、という繰り返しでしたね。
ー コンサルティングを始めさせていただいてから約1年が経過し、2009年1月から3月までの収入と2010年同期間の収益を比較すると、年換算で8億円増になっています。また、GHCが保有している全国の病院のデータでベンチマークをしたところ、1日単価は同規模の病院において最高額でした。当初、GHCに期待してくださっていたことは、まずはデータを提示するということでしたが、ご期待に添うことはできたでしょうか。
高倉範尚先生 期待していただけの結果を出していただいたと思っています。期待以上かもしれませんね。コンサルティングは無料ではありませんから、目に見える形で効果が出れば一番。それは間違いなく出ました。そして、目に見える効果以外にも、分析手法や職員の意識改革など、かなりのインパクトがあったと思います。この4月からもGHCのコンサルタント業務を通して当院の職員に分析に関するノウハウをしっかり習得してもらいたいと期待しているんです。
ー ところで、先ほど昨年のキャッチフレーズは「一歩前へ」だったとうかがいましたが、今年、高倉先生が提示したフレーズは何だったのでしょうか?
高倉範尚先生 「責任」なんです。質の高い病院になってきているので、そういう病院で働く責任を果たさなければいけません。医師が患者さんを診ることは当たり前だし、検査室が検査データを出すのは当たり前。そうではなく、医師はより良い臨床結果を出さなければいけないし、データを世の中に発信していかなければいけない。そうしたことを行ってこそ、責任を果たすということだと皆に言っています。
ー 最後に、今後、病院が進むべき方向性について先生のお考えを教えてください。
高倉範尚先生 リーディングホスピタルですね。情報発信ができる病院、医師や看護師といった職員も患者さんも集まるマグネットホスピタル…、いろいろな意味でのリーディングホスピタルをめざしています。そのためには、人に影響を与える人がどれほどいるかが重要。外科にはいい人材が揃っていますし、今度、内科もさらにマンパワーが充実する予定です。
一方で、課題は産科医療をやっていないこと。それに伴って小児科も弱い。福山医療センターが地域の周産期医療センターなので、地域での棲み分けはできているのかもしれませんが、救命救急センターは市内で当院にしかありませんし、お産以外の母体救急も重要です。地域においても一番の課題だと思いますので、地域に安心を与えるために、人員を確保し産婦人科医療を再開、充実させることが必須だと考えています。
福山市民病院
〒721-8511 広島県福山市蔵王町5-23-1
Tel 084-941-5151
http://www.fukuyamacity-hosp.jp/
広報部 | |
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