事例紹介

2015年10月01日

【病院事例】病院DBからデータを提示、診療現場が自ら「改善」の必要性に気づき、取り組む風土を|生長会府中病院

病院名 府中病院 設立母体 民間病院
エリア 近畿地方 病床数 380
コンサルティング期間 7年間
病院名 府中病院
設立母体 民間病院
エリア 近畿地方
病床数 380
コンサルティング期間 7年間
病院ダッシュボードχ
  • ・DPC分析
  • ・財務分析
  • ・マーケット分析
  • ・外来分析

 病院内の既存データを使って自院の診療機能を把握したり、他院と比較したりできる次世代型病院経営支援ツール「病院ダッシュボード」のユーザー会が8月31日に、大阪府吹田市の済生会吹田病院で開催されました。

 今回は、実際に「病院ダッシュボード」を活用している社会医療法人生長会府中病院(大阪府和泉市)から「病院ダッシュボードの分析結果を病院の経営・運営にどう活かしていくか」というテーマで発表が行われました(府中病院様の取り組みについてはこちらもご覧ください)。

8月31日にGHCが開催した「病院ダッシュボード」ユーザー会で事例発表をしてくださった、社会医療法人生長会府中病院(大阪府和泉市)企画室の奥村峰和氏

現場が「改善の必要性」に気づくことが最も重要

 府中病院は「質の伴った高密度急性期病院」を目指し、そのための指標の1つとして「DPCII群病院」を目標に掲げています。

 ただし、現在、II群要件のうち「診療密度」と「難易度(高度な医療技術の実施)」を満たせておらず、病院ダッシュボード活用した取り組みを推進しています。

 診療密度を高めるための「王道」は、平均在院日数を短縮し、1日当たりの資源投入量を高めることです。府中病院の平均在院日数は、過去10年間で3日しか短縮しておらず、ここ5年間では大きな変動がないと言います。この点について同院企画室の奥村峰和氏は、「意識して取り組まなければ、平均在院日数はなかなか短縮できない」ことを強調しました。

 在院日数短縮に向け、府中病院では全国症例数上位50疾患を対象に、自院とDPCII群病院とのベンチマーク分析を実施しています。これにより、各診療科の課題が「見える化」できます。

 府中病院では、院長・副院長らで構成される経営委員会を設置していますが、そこでは「地域連携を強化しよう」「パスを適正に見直して運用しよう」といった、あくまで大きな方針のみを決定。その方針に基づいて、各診療科で具体的な取り組みに落とし込んでいきます。奥村氏は「動くのは現場である。そのため、現場の医師や看護師と、事務方で構成される分析チームとが話し合う場を設けている」と説明しました。ただし、「対策案を策定し、実行するのはあくまでも現場である。そのため分析チームは『こうしてください』と教示するのではなく、データを示し、その意味を現場に理解していただき、自ら気づいてもらうようにしている」点を強調しています。

ユーザー会(大阪)奥村氏スライド1 150831 ユーザー会(大阪)奥村氏スライド2 150831 ユーザー会(大阪)奥村氏スライド3 150831

 さらに在院日数の短縮に当たっては、「医療の質を落とさない」ように細心の注意を払っているとのこと。患者に無理をさせず、安心・納得して退院してもらうことが必要ですし、またスタッフが対応できるような取り組みをしなければいけません。

 これに関連して、奥村氏は府中病院における「地域連携」の取り組みを紹介してくれました。

転院先のSTAFFに来院してもらい、後方連携を強化

 府中病院では、2年前から退院支援を行う看護師(リンクナース)を配置しています。現在、2018年度の診療報酬改定に向けた議論が厚生労働省の中央社会保険医療協議会で進められており、そこでは「退院支援を行う専従・専任の看護師配置を診療報酬で評価してはどうか」といった点が検討テーマの1つとなっています。府中病院の先進性が伺えます。

ユーザー会(大阪)奥村氏スライド4 150831

 さらに府中病院では、院外の介護職との連携も進めています。府中病院のある和泉市では、「介護と看護との連携サマリ」(連携シート)を作成しており、円滑な情報共有に一役買っています。

 奥村氏は、「ケアマネは患者の在宅生活をよく知っている。入院時に、ケアマネに『この患者は在宅生活ではどういう状況だったのか』をサマリに書いてもらう。これによって看護師は患者の状況を把握し、適切な院内でのケアを提供できる。さらに退院時には、院内の看護師が『どのような入院生活を送り、どういった医療を提供したのか』、例えば『自分では薬を服薬できないので、介助が必要』といった事項をサマリに記載し、ケアマネに引き継ぐ。これによって十分な情報連携ができる」と説明します。患者の療養生活までを考えた退院調整が実施されています。

 また、「退院・転院先の病院から看護師やMSWに来てもらい、患者の状態を見てもらう」といった取り組みもしています。これにより転院先の看護師、MSWは「ここまでやってもらっているなら安心」と考え、円滑な受け入れが進むと言います。患者・家族も「転院先病院のスタッフが来てくれる」ことで安心して転院に望めます。

 とかくケアマネや回復期・慢性期病院のMSWにとって、急性期病院の看護師などは「敷居が高い」と感じがちです。この点、府中病院では自ら呼びかけることで、多職種が病院の壁を超えて同じ立ち位置で患者を見ることができており、緊密な連携ができていると言えそうです。

 こうした取り組みによって、ここ5年間変動のなかった平均在院日数が2013年度から14年度の1年間で0.9日短縮するという効果も出ています。

紹介元クリニックの情報を集積し、前方連携を強化

 ところで平均在院日数の短縮は、病床利用率(稼働率)の低下に繋がります。このため府中病院では「前方連携」にも力を入れています。

 府中病院では「地域の医療機関から、広く信頼を得る必要」があると考え、「府中病院がどのような機器を持ち、どれだけの技術を持っているのか」などを凝縮したパンフレットを作成し、地域のクリニックや中小病院に向けてアピールしていると言います。

 さらに、連携先のクリニックの先生を対象とした訪問情報ツールとして「開業医カルテ」も作成しています。診療科別紹介割合や検査項目別紹介割合、年度ごとの紹介件数増減などの他、訪問目的や先方との会話内容をこのカルテに記載しています。

 奥村氏は「一般企業であれば取引先の情報をデータベースにしている。それと同じ考えである」と強調。「相手のことを知らなければ信頼を得られない」と述べています。

 このカルテをベースに、事務方が中心となって訪問を行っており、地域のクリニックの3%程度が、年間20人以上の患者を紹介してくれる「ヘビー」層になっているといいます。今後は、年間5人以上の患者を紹介してくれる「ミディアム」層との信頼関係を強固にし、「ヘビー」層になってもらうことを目指しているとのことです。

「自ら改善していこう」と全職員が考える風土・文化

 こういった総合的な取り組みを行うことで、現在、診療密度は平均で2640点となり、DPCII群平均の2550点(2014年10月以降)を上回る成果が出ています。

 この点について奥村氏は、「府中病院の文化」にも言及しました。府中病院では、職員全員が当事者意識を持ち、「自分のこと」として改善に取り組んでいるといいます。

 ここで注目されるのが、「職員の日々の行動を認め、褒める」という取り組みです。職員同士が認め、褒め合うことで、「周りが見てくれている。自分の行動が評価されている」と認識でき、モチベーションが向上し、チームワークが生まれ、職種の壁がなくなり、組織つまり病院の力が強くなると奥村氏は強調しました。

 医療機関だけでなく、あらゆる組織が傾聴すべき取り組みと言えます。


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