お知らせ

2019.09.05

出来高病院のデータ分析事例、JHAstisユーザーが紹介―「中小出来高病院のための経営改善手法研修会」開催

 日本病院会は8月27日、「中小出来高病院のための経営改善手法研修会」を開催しました。出来高算定病院向け経営分析システム「JHAstis(ジャスティス)」の活用方法や経営改善事例をJHAstisユーザーが紹介。出来高病院向けの経営関連講演として、中央社会保険医療協議会委員で日本病院会の島弘志副会長(聖マリア病院病院長)、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)のコンサルタントが講演しました。

 

勉強会の様子

 

PDCAすべての場面で活用できる

 

 JHAstisは、出来高算定病院が経営改善を推進する際に活用できる経営分析レポートです。主な活用方法としては、

 

【Plan 】現状把握・他病院と比較・適切な目標設定

【Do  】現場の医療職を動かす

【Check 】各種会議・委員会の重要資料

【Action】院内の意識改革

 

のPDCAサイクルのすべての場面で活用できます。

 

 JHAstisの利用者は、専用ソフトを用いて患者情報を匿名化したレセプトデータを日本病院会へ提供するだけで、

(1)自病院の各種経営データの分析

(2)他病院とのベンチマーク分析

(3)自病院と他病院のデータを確認しながら活用できる各種加算・指導料の算定マニュアル--

など5つのレポート(以下)を受け取ることができます。

 

月次レポート:主要経営指標の分析や加算取得など経営指南書を毎月配信

定期レポート:他院とのベンチマーク分析など有益な分析情報を提供

回復期レポート:回復期病棟ならではの切り口でデータ分析

経年比較レポート:病院長などの代表者に向けて半期ごと変化をレポート

臨時レポート:診療報酬改定の重要論点と自病院の影響に絞って徹底解説

 

 また、今期はGHCが提供する経営分析システム「病院ダッシュボードχ(カイ)」のオプション機能で、加算算定支援ツール「チーム医療plus」の無料トライアル権を、期間限定(2020年1月末まで、先着30病院)で特別に付与しています(DPCデータの提出が条件)。また、GHCが開催する各種セミナーへの無料参加権、GHCが発行する有料レポートの購読権も付いてきます。

 

リハビリ効率化し日当点1万円アップ

 

 勉強会の事例紹介では、伊勢田中病院(三重県伊勢市、83床)の医事課課長で病院経営管理士の高尾泰則氏が登壇。JHAstisの経営分析レポートを活用した同院での改善状況を報告しました。

 

高尾泰則氏

 

 同院は急性期を終えた患者に対し、入院での「高度慢性期医療」を提供しています。人工呼吸療法や人工透析などに関する最新の医療機器を導入し、知識経験豊富なスタッフが日夜診療にあたっています。また、在宅医療、救急医療にも取り組んでおり、他の医療機関や老人ホームなどの老人入所施設と連携し、地域全体の医療の質向上を目指しています。

 

 JHAstisは2016年から参加。DPC病院と比較し、出来高病院は経営分析にデータを活用しづらい状況だったため、JHAstisの「経営分析レポート」を重要な参考資料として活用しながら、経営改善に取り組んでいきました。

 

 大きな成果にむすびついたのはリハビリテーションです。データ分析を通じて、同院が得意とする呼吸器リハビリテーションの効率化に向けた取り組みを推進。セラピストの採用なども重なって、リハビリの回転数が上がり、実施率、平均単位数ともに増加していきました。5年前には平均単位数2単位程度だった1日平均のリハビリ単位数は、2018年には3.8単位とほぼ倍増しました。

 

 

 リハビリの効率化に伴い、入院の日当点も大きく向上。外来は1万5000円、入院は3万5000円と、それぞれ5年前と比べて2割程度単価が向上しています。

 

 

消費税対応で厚労省に苦言

 

 勉強会の冒頭に挨拶した日本病院会でJHAstisを統括する大道道大副会長は、持続可能な医療提供体制の再構築に向けて、各都道府県で開催されている「地域医療構想調整会議」について言及。「『公立病院の調整が目的の会議』と考えていたら、大間違い。そのような認識のまま、自病院の強みをブラッシュアップできず、地域の中での役割も明確にできないような病院は、今後1~2年で厳しい状況になる」と警鐘を鳴らしました。

 

大道道大副会長

 

 講演では、「中小出来高病院における診療報酬改定への備え」と題して日病の島副会長が登壇。2017年に久留米労働基準監督署による聖マリア病院への是正勧告を事例に、医師の働き方改革について言及したほか、統合・再編や病床削減までを視野に入れた「地域医療構想」の状況について解説しました。また、控除対象外消費税に関する問題点を取り上げ、「問題は、消費税対応によって増収減益になり、多くの医療施設が赤字経営に陥っている」と指摘。控除対象外消費税を診療報酬で補填するも補填不足があったことなどから、「消費税が10%に増税される今年の10月以降は、新しい補填式で改善されることを期待する」と厚労省に対して苦言を呈しました。

 

島副会長

 

 そのほか講演では、GHCコンサルタントの中村伸太郎と太田衛が登壇。それぞれ「今ならまだ間に合う、生産性が高い院内組織の構築」「病院の生産性を高めるデータ分析手法およびツール活用」と題して講演しました。