お知らせ

2020.08.07

日本病院会が新型コロナをテーマに初のウェビナー開催、中小出来高病院のための経営改善手法研修会

 日本病院会は7月28日、「中小出来高病院のための経営改善手法研修会」を開催しました。新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、今回は初のウェビナー形式で開催。51病院 63人が参加しました。


 演題は2つ。演題「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響と対策」は、日本病院会の大道道大副会長が座長を務め、愛友会伊奈病院(埼玉県伊奈町、151床)の朝見浩一事務長および新東京石心会さいわい鶴見病院(横浜市鶴見区、60床)の岡本正太事務長が講演しました。「逆境を追い風に!これからの病院経営が取り組むべきこと~JHAstis2.0活用方法~」の演題は、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)のコンサルタントでアソシエイトマネジャーの中村伸太郎が務めました。



ウェビナーの様子(画面右上は大道副会長)

ウェビナーの様子(画面右上は大道副会長)


バージョンアップした「JHAstis2.0」


 同研修会は、日本病院会の会員病院で、出来高病院が対象。日本病院会が展開する出来高算定病院向け経営分析システム「JHAstis(ジャスティス)」の活用を前提に、実践的な経営関連情報や具体的な経営改善手法を学べます。JHAstisは、これまでのレセプトデータだけではなく、より詳しく精度の高いベンチマークデータを示せるDPCデータも活用した経営分析レポート「JHAstis2.0」へとバージョンアップしています。


 JHAstisは、出来高算定病院が重要な経営判断を行う際に活用できる経営分析レポートです。JHAstisユーザーは、専用ソフトを用いて、匿名化したレセプトデータを日本病院会へ提供するだけで、経営の改善に資する情報を掲載した以下のレポートを受け取ることができます。


・経営重要指標レポート:毎月把握すべき主要な経営指標
・増収対策レポート:加算等算定強化、増患などの具体的な手法を病院経営の専門家が解説
・エグゼクティブレポート:時間のない院長など病院幹部が改善状況を俯瞰
・病床機能別レポート:個別の病床機能に特化した分析。入棟中の診療状況等を他病院比較


コロナ受け入れなしでも健診事業6割減


 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響と対策」の演題で、伊奈病院の朝見事務長は、新型コロナの影響により、4~6月の3か月で約1億円の赤字になった状況を説明しました。



朝見事務長(画面右上)

朝見事務長(画面右上)


 同院ではコロナ患者受入れ医療機関には該当せず、病棟や外来の閉鎖などを行っておりません。それでも外来部門や健診部門の収益が大きく落ち込みました。特に健診部門の落ち込みは大きく、4~6月の健診事業は前年同月比で約6割減。全国健康保険協会からのキャンセル要請を受けたことが要因で、緊急事態宣言が発出された後の4月10日から5月6日の健康診断をすべて中止または延期するなどの状況になりました。


 このような状況に対して、同院では(1)オンライン診療の実施(2)外来における非常勤医枠の削減(3)新規事業の大幅見直し(4)病床稼働減による受け入れ体制の強化など各種施策―などによる経営の効率化を実施しています。


コロナ教訓受け「紹介にとどまらない地域連携を」


 さいわい鶴見病院は、院内でコロナ感染者が発生したため、一部病棟の閉鎖、一時的な外来部門やリハビリテーション部門、健診部門の休止などの状況になりました。



岡本事務長(画面右上)

岡本事務長(画面右上)


 こうした状況を受けて、今年3月時点96%だった入院部門の稼働率は、4月に54%まで落ち込みましたが、5月61%、6月88%、7月は15日時点で3月と同水準の96%まで戻ってきています。外来と健診についても同様に4月は大きく落ち込みましたが、5月以降は回復傾向を示しています。


 同院は後方支援を軸とした戦略から、昨年より、自院の地域包括ケアの柱として整形外科や糖尿病内科の展開を進めています。「地域の医療機関として健康寿命を延ばすことを目指して」の基本方針にそって、(1)「入院を止めない」方針を実践するため、入院前に病院負担で抗体検査を実施(2)外来診療における電話再診活用(3)先送りになった健診の再予約(4)地域で不足していたPCR検査を行う発熱外来を開始――などの取り組みを進めています。


 講演した岡本事務長は「市内の医療機関とコロナ禍で不足する医療物資を融通し合った。患者紹介にとどまらず地域連携は今後、医療物資の融通なども含めた関係性に発展することが望ましい」と指摘しました。


集患対策もできる「JHAstis2.0」


 最後にGHC中村がバージョンアップした経営分析レポート「JHAstis2.0」について解説。新型コロナ感染拡大を受けて、5月29日に緊急発行した「緊急レポート」の解説をするとともに、「JHAstis2.0」の魅力を「単価向上」「集患対策」の2つに分けて紹介しました。



当日の会場の様子(左が中村)

当日の会場の様子(左が中村)


 単価向上では、新たに加わった「増収対策レポート」を取り上げました。5月に発行した「増収対策レポート」では、認知症ケア加算を取り上げ、ベンチマーク分析を起点にした経営改善の手順を解説しました。200床未満の比較対象病院数が約200施設と国内最大級になったことで、ベンチマーク分析の精度が飛躍的に向上しました。



約200病院との比較が可能になったベンチマーク分析のイメージ

約200病院との比較が可能になったベンチマーク分析のイメージ


 集患対策においては、同じく「増収対策レポート」の7月号で取り上げた「入院患者住所分析」の見方を紹介。どの地域の患者がどれくらいの増減で推移しており、その増減要因をどのように分析していくのかについて解説しました。こうした集患対策のデータ分析もバージョンアップして新たに加わった機能です。



視覚的にも分かりやすい患者エリア分析のイメージ

視覚的にも分かりやすい患者エリア分析のイメージ


 講演後の閉会のあいさつで大道副会長は、「今年は収益を確保できる病院はほとんどないだろう。来年、再来年と収益を確保できるようになるためにも、日本病院会はJHAstisを通じて少しでも病院経営の支援をしていきたい」とコメントしました。


 ご興味のある方はぜひ、以下のページより内容をご確認ください。


JHAstis2.0