お知らせ

2021.04.08

「他院の具体的な改善内容を学べた」、初のウェビナー討論会を実施、日病がJHAstis勉強会開催

日本病院会は3月23日、「令和2年度 第3回JHAstis(ジャスティス)勉強会~『withコロナ時代 2021年度への備えは十分か』~」を開催しました。新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、前回に引き続きウェビナー形式で開催。35病院、56人が参加しました。


今回は二部構成で実施。第一部は前回と同様に聴講型のウェビナーとして実施し、第二部は初のウェビナー形式でのユーザー・グループ討論会を行いました。討論会では「他院の具体的な改善内容を学べた」などの声がありました。


ウェビナーの様子
ウェビナーの様子


コロナ禍での改定対応をどうすべきか


勉強会の対象は、日本病院会会員の出来高病院。ウェビナー形式での開催は、今回で3回目となります。日本病院会が展開する出来高算定病院向け経営分析システム「JHAstis(ジャスティス)」の活用を前提に、実践的な経営関連情報や具体的な経営改善手法を学べます。


JHAstisは、出来高算定病院が重要な経営判断を行う際に活用できる経営分析レポートです。JHAstisユーザーは、専用ソフトを用いて、匿名化した診療データを日本病院会へ提供するだけで、経営の改善に資する情報を掲載した以下のレポートを受け取ることができます。

・経営重要指標レポート:毎月把握すべき主要な経営指標
・増収対策レポート:加算等算定強化、増患などの具体的な手法を病院経営の専門家が解説
・エグゼクティブレポート:時間のない院長など病院幹部が改善状況を俯瞰
・病床機能別レポート:個別の病床機能に特化した分析。入棟中の診療状況等を他病院比較

今年度からレセプトデータのみではなく、より詳しく精度の高いベンチマークデータを示せるDPCデータも活用した経営分析レポート「JHAstis2.0」へとバージョンアップ。今回の研修会では、2021年度の介護報酬改定の要点を確認するとともに、「JHAstis2.0」を使ってこうした診療・介護報酬改定対応をどのように行っていくべきかを解説しました。


「振り返りの機会となり非常に有益」


討論会ではまず、JHAstisのユーザー事例として、社会医療法人高橋病院の法人情報システム室の滝沢礼子氏が「JHAstis経営レポート活用のご紹介~ケアミックス型病院の立場から~」と題して講演。JHAstisレポートを院内の10部門で共有したり、これをベースに「収支検討会」(経理課・医事課・看護部長・同法人老健事務長・情報システム室長)でさまざまな切り口で分析して各種改善活動に活用したり、全国平均で上位の状況が確認できたらこれを職員のモチベーション向上に活用したり、など経営改善のあらゆる場面で活用している状況が報告されました。


高橋病院のプレゼンの様子
高橋病院のプレゼンの様子


JHAstisユーザー同士のグループ討論会では、(1)一般病床と回復期リハビリテーション病床を持っている病院群(2)障害者病棟を持っている病院群――の2つのグループに分けて、それぞれ「加算算定率の向上」「集患対策」「事業計画の立案」などをテーマに議論しました。実際のJHAstisレポートを持ち寄り、テーマに応じて自病院の状況はどうか、またその要因はどこにあるのか、などを共有し合い、積極的な議論が展開されました。


討論会後は、「これまでの自院の取り組みを振り返るきっかけになって非常に有益だった」「他病院の具体的な経営改善の状況が共有できた。今後の参考にできる」などの声が寄せられました。


「LIFE」始動、介護の動向に注視を


第一部の聴講型のウェビナーでは、冒頭に挨拶した日本病院会の大道道大副会長は、コロナ禍で経営状況がさらに厳しくなっている中小病院に向けて「(1)制度の理解(2)正確な算定(3)地域医療構想の中での自院のポジショニング――の3つを今一度確認していただき、自病院の進むべき方向性と何を改善すべきかを考えるきっかけにしてもらいたい」と述べました。


最初の講演である介護報酬改定については、「中小出来高病院が知っておくべき介護報酬改定の要点」と題して、日本病院会理事で社会医療法人財団新和会八千代病院の松本隆利名誉院長が講演。(1)感染症や災害への対応力強化(2)地域包括ケアシステムの推進(3)自立支援・重度化防止の取組の推進(4)介護人材の確保・介護現場の革新(5)制度の安定性・持続可能性の確保―の今回改定の5本柱について解説しました。


講演では特に、「自立支援・重度化防止の取組の推進」のうち「介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進」に注力して解説しました。科学的介護の取り組みは、主に「VISIT」(通所・訪問リハビリ情報)と「CHASE」(高齢者の状態・ケアの情報)のデータベースを組み合わせた科学的介護情報システム「LIFE」が稼働します。今回の改定では、これを活用した介護サービス提供を評価する新たな加算(科学的介護推進体制加算など)が創設されました。


科学的介護について


松本氏は、「医療、介護、生活支援の情報共有の連携推進の流れは今後ますます加速する。この流れは病院にも影響があり、介護分野の動向も注視し、これを自院の経営に生かすことが重要だ」としました。


続いて、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルタントである佐藤貴彦が「改定対応を済ませるために~JHAstis2.0活用案内」と題して、JHAstisレポートの活用方法を紹介しました。レポートのメインでもある加算算定について、具体的な加算項目を示しながら解説。また、改定に限らないすべての加算において、加算算定を(1)実施(2)入力(3)請求――の3つのフローに分けて、それぞれ「誰が」「いつ」「どこで」「何を」「どのように」のどこに算定漏れの原因があるのかを明確にすることが重要としました。


佐藤 貴彦(さとう・たかひこ)

株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門コンサルタント。慶應義塾大学文学部卒。医療介護系ニュースサイトを経て、GHCに入社。診療報酬改定対応、集患・地域連携強化、病床戦略立案などを得意とする。多数の医療機関のコンサルティングを行うほか、「日本経済新聞」などメディアの取材対応や、医療ビッグデータ分析を軸としたメディア向け情報発信を担当。日本病院会と展開する出来高算定病院向け経営分析システム「JHAstis(ジャスティス)」を担当する。