お知らせ

2022.03.01

「他院の視点や知恵も学べた」、情報共有型の新たな診療報酬改定セミナー、日本病院会が開催

日本病院会は2月22日、「中小出来高病院経営管理者向け研修会」を開催しました。新型コロナウイルス感染症の拡大が収まらないため、事務局、演者、聴講者が完全オンラインで参加するweb形式で開催。78病院、110人の申込みがありました。


テーマは2022年度診療報酬改定および経営改善の手順。演者は日病副会長で聖マリア病院病院長の島弘志氏、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)のコンサルタントでアソシエイトマネジャーの佐藤貴彦が務めました。


講演する日本病院会の島弘志副会長
講演する日本病院会の島弘志副会長


今回の研修会では完全オンラインでの討論会も実施。日本病院会が展開する出来高算定病院向け経営分析システム「JHAstis(ジャスティス)」のユーザーに限ったもので、診療報酬改定対応に向けた各病院の取り組みを共有。「他院の視点や知恵を学び、当院が取れる新たな加算を発見した」などの声がありました。聴講のみの改定セミナーが多い中、討論会を通じた情報交換や気づきによってより改定内容の理解を深める情報共有型の新たなスタイルを示しました。


「JHAstis」がDPCデータ対応、ユーザー討論会も


同研修会は、日本病院会の会員病院で、出来高算定病院が対象です。研修会は聴講形式の第一部、討論会の第二部の二部構成。討論会は、JHAstisユーザーのみ参加できます。


JHAstisは、出来高算定病院が重要な経営判断を行う際に活用できる経営分析レポートです。JHAstisユーザーは、専用ソフトを用いて、匿名化した診療データを日本病院会へ提供するだけで、経営の改善に資する情報を掲載した以下のレポートを受け取ることができます。

●経営重要指標レポート:毎月把握すべき主要な経営指標
●増収対策レポート:加算等算定強化、増患などの具体的な手法を病院経営の専門家が解説
●エグゼクティブレポート:時間のない院長など病院幹部が改善状況を俯瞰
●病床機能別レポート:個別の病床機能に特化した分析。入棟中の診療状況等を他病院比較
●臨時レポート:診療報酬改定時などに必要な情報を提供

一昨年度からレセプトデータのみではなく、より詳しく精度の高いベンチマークデータを示せるDPCデータも活用した経営分析レポート「JHAstis2.0」へとバージョンアップしました。


現場が知りたい具体的な内容と新たな発見も


討論会は、参加した7病院がオンライン上で2グループに分かれて、それぞれGHCコンサルタントが司会進行役を務めて実施。各病院の参加者が院内の改定対応でどのような役割を担っているのかをそれぞれ説明し共有し合った上で、今回の改定でどのような項目に着目しているのか、どのような対策を計画しているかなどを紹介しました(図表)。

今回の討論テーマ①②と討論方法


改定対応の役割においては、大きくトップダウン型とボトムアップ型の2種類に分かれました。トップダウン型では、改定対応の担当者が情報収集から改定対応案の作成、院内周知までを一手に担って推進します。ボトムアップ型では、各部門がそれぞれ情報収集から独自に改定対応案をまとめ、各部門からあがってきた案を改定対応者がまとめるというやり方です。各部門は各職能団体が開催する勉強会などで情報収集し、部門ごとで議論することで、より専門的な視点からの改定対応を検討できます。


今回の改定項目で着目している点については、心電図モニターの管理の項目が評価項目から削除されるなどの変更があった「重症度、医療・看護必要度」の評価項目および施設基準の見直し。「自院の一般病棟から転棟した患者割合60%未満」の要件の対象拡大や要件を満たせない場合の減算幅上昇などの見直しがされた地域包括ケア病棟入院料の見直し、依然としてコロナ禍で感染拡大が続く中での関連加算である「感染対策向上加算」などが多くの病院で注目されていました。


そのほかにも褥瘡対策の見直しや手術後の患者に対する多職種による疼痛管理に係る評価の新設など、さまざまな改定項目で各病院の考え方や対応準備の状況を意見交換。継続的な二次性骨折予防に係る評価である「二次性骨折予防継続管理料」の新設なども話題にあがりました。


参加病院からは「今後の方向性や着目すべき点が見えてきたので、引き続きポイントを絞って研究していきたい」「誤った認識を是正できたり、他院の取り組みを聞いて新たに取れる加算も発見できたりした」「(改定対応者として)同じような悩みが聞けて安心した」などの感想があり、通常の聴講型の改定セミナーでは得られない価値を共有できたようです。


JHAstisの担当役員で日本病院会の大道道大副会長は今回の討論会を傍聴し、「病院経営はコロナ禍で厳しい状況が続いているが、みなさんの熱意、熱気がダイレクトに感じられ、非常に心強く頼もしく思った。みなさんの病院の管理者は、幸せな管理者だ」との感想を述べて討論会を締めくくりました。


改定シミュレーション、来年度からJHAstis新サービスも


研修会では、島氏が「中小出来高病院における診療報酬改定への備え」と題して講演。今回の改定の柱は4つありますが、(1)新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築(2)安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進――の2つが重点課題とされているため、コロナ対策と働き方改革を軸にしつつ、(a)制度対応(b)外来医療(c)入院医療(急性期、地域包括ケア・回復期リハビリテーション、慢性期、小児・周産期)――の大きく3つに分けて解説しました。


働き方改革では、▽医師事務作業補助体制加算の見直し▽特定行為研修修了者の活用の推進▽病棟薬剤業務実施加算の見直し▽周術期における薬学的管理の評価の新設――など今回の改定で注目すべき項目のポイントを網羅的かつ分かりやすく説明しました。


佐藤は「令和4年度に向けて中小出来高病院が準備すべきこと」と題して、診療報酬改定以外に▽地域医療構想▽外来機能報告制度▽働き方改革▽集患対策――などの経営課題も扱って講演。JHAstisの経営分析レポートを活用した集患対策の進め方などを具体的に示しました。また、来年度のJHAstisから経営分析レポートの動画解説や分析用の新ツールの配布など新サービスの提供をすることも明かしました(図表)。


JHAstis2.0 5種類のレポート+α


JHAstisは、診療報酬改定に合わせて「臨時レポート」も発行しています。改定のポイントはもちろん、各病院の収益インパクトなどをシミュレーションしてお届けするという内容です。JHAstisにまだご参加されていない日本病院会の出来高病院はこの機会に是非、参加をご検討ください。


佐藤 貴彦(さとう・たかひこ)

株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門コンサルタント。慶應義塾大学文学部卒。医療介護系ニュースサイトを経て、GHCに入社。診療報酬改定対応、集患・地域連携強化、病床戦略立案などを得意とする。多数の医療機関のコンサルティングを行うほか、「日本経済新聞」などメディアの取材対応や、医療ビッグデータ分析を軸としたメディア向け情報発信を担当。日本病院会と展開する出来高算定病院向け経営分析システム「JHAstis(ジャスティス)」を担当する。