お知らせ

2021.01.25

相澤日病会長「未来志向型の病院経営を」、日本病院会が経営改善研修会開催

 日本病院会は12月22日、「中小出来高病院経営管理者向け研修会」を開催しました。新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、ウェビナー形式で開催。81病院、112人が参加しました。


講演の様子
講演の様子


 演題は2つ。演題「地域の医療提供体制と中小出来高病院が果たしている役割、これから果たすべき役割」は、日本病院会の相澤孝夫会長が講演し、「データ分析に基づく集患でwithコロナ時代を生き抜く」の演題は、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)のコンサルタントの佐藤貴彦が務めました。


 登壇した相澤会長は、世界規模の社会危機となっている新型コロナ対策だけではなく、高齢社会で社会構造が大変動する今の時代においては、「未来志向型の病院経営が必要」とした上で、病院の未来像(病院のビジョン)を明確にすることの重要性を訴えかけました。


コロナ禍の「集患」もテーマに


 同研修会は、日本病院会の会員病院で、出来高病院が対象。ウェビナー形式での開催は、今回で2回目となります。日本病院会が展開する出来高算定病院向け経営分析システム「JHAstis(ジャスティス)」の活用を前提に、実践的な経営関連情報や具体的な経営改善手法を学べます。


 JHAstisは、出来高算定病院が重要な経営判断を行う際に活用できる経営分析レポートです。JHAstisユーザーは、専用ソフトを用いて、匿名化した診療データを日本病院会へ提供するだけで、経営の改善に資する情報を掲載した以下のレポートを受け取ることができます。

・経営重要指標レポート:毎月把握すべき主要な経営指標
・増収対策レポート:加算等算定強化、増患などの具体的な手法を病院経営の専門家が解説
・エグゼクティブレポート:時間のない院長など病院幹部が改善状況を俯瞰
・病床機能別レポート:個別の病床機能に特化した分析。入棟中の診療状況等を他病院比較

 従来はレセプトデータのみが分析対象でしたが、今年度から、より詳しく精度の高いベンチマークデータを示せるDPCデータも活用した経営分析レポート「JHAstis2.0」へとバージョンアップしています。今回の研修会では、「JHAstis2.0」へのバージョンアップで改編・追加された「増収対策レポート」のうち、コロナ禍においてさらに重要さが増している「集患」をテーマに講演もしています。


ビジョンなくして組織活動なし


 「地域の医療提供体制と中小出来高病院が果たしている役割、これから果たすべき役割」の演題で相澤会長は、75歳以上(特に85歳以上)の高齢者が増えることにより、多くの疾患と症状(老年症候群)を抱えた要支援・介護の高齢者が対象の医療需要が増加すると指摘。退院困難患者の傷病に着目して医療目標を定める従来型の医療だけではなく、全体の病態や患者の生活などを総合的に考慮して医療目標を設定する支援が軸の「新たな医療」が必要になるとしました。


講演する相澤会長
講演する相澤会長


 急性期患者を診る「基幹型病院」と、リハビリや介護サービス、予防や街づくりまでを担う多機能を発揮する「地域密着型病院」とで役割と分担を明確にした上での連携の必要性にも言及。連携においては今の医療圏の考え方に触れて、「社会が大変革に見舞われている今こそ、二次・三次医療圏という考え方を見直す時ではないか」と指摘しました。


 アフターコロナを見据えた今後の病院経営においては、「先行き不透明であるからこそ、経営者が創るべき自院の未来の姿を明確にすべき。そのことを決断、覚悟し、広く宣言することが重要。病院のビジョンは組織の根幹であり、ビジョンがあるからこそ組織としての活動ができる」と、このコロナ禍で自院の立ち位置を今一度、見つめ直すように訴えかけました。


分析に時間をかけず実行を


 「データ分析に基づく現状可視化と今後の集患対策」の演題では、佐藤がリニューアルしたJHAstisの特徴をご紹介しつつ、集患戦略の基本的な考え方について解説しました。


講演する佐藤
講演する佐藤


 JHAstisはこれまで、レセプトデータのみでレポートを作成していました。リニューアルによりDPCデータが加わったことで、「レセプトデータによるタイムリーな実数把握と、DPCデータによる精緻な深掘りのいいところ取りをし、早くて深い分析が可能になりました」。


 講演では、リニューアルで追加された注目の集患をテーマにしたレポート(増収対策レポート)について解説。レポートでは、自院の周辺にあるどの地域の患者が減っているのかなど、集患に必要で有益な情報が多数掲載されています。こうした情報をJHAstisなしで分析するには時間と労力がかかります。佐藤は「分析をJHAstisのようなツールに任せて、その分浮いた時間を実行に充てることが経営改善の近道」として講演を締めくくりました。


佐藤 貴彦(さとう・たかひこ)

株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門コンサルタント。慶應義塾大学文学部卒。医療介護系ニュースサイトを経て、GHCに入社。診療報酬改定対応、集患・地域連携強化、病床戦略立案などを得意とする。多数の医療機関のコンサルティングを行うほか、「日本経済新聞」などメディアの取材対応や、医療ビッグデータ分析を軸としたメディア向け情報発信を担当。日本病院会と展開する出来高算定病院向け経営分析システム「JHAstis(ジャスティス)」を担当する。