GHCブログ

2014年03月07日

これだけは知っておきたい! GHC名物コンサルが教える、2014年度改定の6つの要点

 厚生労働省は3月5日、2014年度診療報酬改定について、ホームページで告示しました。今日は「改定博士」として知られる(?)弊社コンサルタント兼広報室の湯原淳平が、今回の改定について「これだけは知っておきたい!」とする6つの視点についてご紹介させていただきます。

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視点(1)厚労省の「7対1は絶対に増やさない!」の強い意志

 今回は、以下の2月14日に掲載したブログと、3月5日に告示された内容を軸にまとめます。

今期診療報酬の各項目点数が明らかに!(2014年2月14日GHCブログ)

 湯原が今回の改定でまず最初に注目したのは、1日2,558点と予想を大幅に超える点数が付いた地域包括ケア病棟。中でもこの要件の中で、「平成26年3月31日に10対1、13対1、15対1入院基本料を届け出ている病院は地域包括ケア病棟入院料を届け出ている期間中、7対1入院基本料を届け出ることはできない」とされている点に着目しました。

 例えば、地域包括ケア病棟を届け出る10対1の病院が、重症患者の多い病棟で看護師を手厚く配置し、7対1を算定するような戦略が取れません。今回の改定の目玉となる地域包括ケア病棟でこのような要件を課してきた厚労省について、湯原は「『7対1は何が何でも増やさない!』という強い意志が読み取れる」とコメントしています。

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視点(2)追い風となる在宅復帰率の定義は要チェック!

 また、焦点となっていた7対1入院基本料における在宅復帰率の定義について、5日の告示で明らかになりました。焦点とされていたのは、在宅復帰率を決める算定式によっては、7対1を維持するための施設基準である在宅復帰率75%を満たせるか否かに、大きな影響を与えるためです。

 今回の告示で、在宅復帰率を算出する際の母数に、自院の地域包括ケア病棟と回復期リハビリテーション病棟への転棟患者は「入らない」とされました。その一方で、他院の地域包括ケア病棟、回リハ病棟への転棟患者は、計算式の分母・分子に入れ「在宅復帰」として計算に組み込む、とされました。

 これにより、自院に地域包括ケア病棟、回リハ病棟を作ろうとしている急性期病院などにとっては、追い風が吹きます。自院の地域包括ケア病棟などへの転棟で7対1病棟の平均在院日数を短縮できるほか、これによる在宅復帰率の低下も基本的にはありません。

  「平成26年度診療報酬改定関係資料」(3月5日発表)の「III-1 通知」をベースにGHCが作成 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000038855.html

「平成26年度診療報酬改定関係資料」(3月5日発表)の「III-1 通知」をベースにGHCが作成
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000038855.html

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視点(3)影響大の減点措置と期間短い経過措置

 次の注目ポイントは、影響が大きい減点措置と期間が短い経過措置(猶予期間)です。

 減点措置で特に着目すべきは、・紹介率・逆紹介率の低い地域医療支援病院や特定機能病院(500床以上)における初診料と外来診療料・妥結率の低い200床以上病院の初診料、再診料、外来診療料――の2点となります。これは、今回上がった(含む消費増税対応分)初診料、外来診療料をベースに点数を設定するのではなく、2012年制度の初診料、外来診療料をベースに減点措置を作っているためで、「今まで以上に減点インパクトが大きいです」(湯原)。

 経過措置の期間が短い項目については、例えば、亜急性期病床入院医療管理料は2014年9月31日までというように、他にも経過措置が半年というものが散見され、「厚労省のスピード感に社会保障制度改革に対する覚悟を感じる」と湯原は語っています。

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視点(4)手厚く評価された高度急性期、点数倍増の項目も

 今回の改定では、減点や短い経過措置など厳しい対応もある一方、手厚く評価された項目も多くあります。

 特に、「総合入院体制加算」や「特定集中治療室(ICU)管理料」など、高度急性期に対して評価が充実されたことに湯原は着目しております。総合入院体制加算は、今回の改定で「1」と「2」に細分化されました。「1」が従来加算の後継に当たりますが、点数自体は従来の120点から240点へと倍増しています。ただ、人工心肺を用いた手術や放射線治療、化学療法および分娩件数などに係る一定の実績をすべて満たすことに加え、精神病床を持つことが要件に加わっています。また、「『1』『2』とも地域包括ケア・療養病棟の届出ができないこともポイントです」(湯原)。

出典:第271回中央社会保険医療協議会 総会(2月12日開催)厚労省配布資料(総-1)P14より

出典:第271回中央社会保険医療協議会 総会(2月12日開催)厚労省配布資料(総-1)P14より

 ICU管理料と重症度が高い「ハイケアユニット(HCU)入院医療管理料」に対する点数も約1.4倍と大幅アップ。ICU管理料は医師の複数配置、臨床工学技士の24時間勤務体制など、HCU入院医療管理料は重症度などそれぞれ要件を従来型よりも厳しくした項目を新設し、この項目の点数を手厚く設定しています。従来型のICU管理料は点数自体は変わりませんが、重症度基準が変わり、HCU入院医療管理料は点数も人員配置も減らされましたので、チェックが必要です。経過措置は2015年3月31日までとなります。

  出典:第271回中央社会保険医療協議会 総会(2月12日開催) 厚労省配布資料(総-1)P7より

出典:第271回中央社会保険医療協議会 総会(2月12日開催) 厚労省配布資料(総-1)P7より

  出典:第272回中央社会保険医療協議会 総会(2月12日開催) 厚労省配布資料(総-1)P9~10より

出典:第272回中央社会保険医療協議会 総会(2月12日開催) 厚労省配布資料(総-1)P9~10より

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視点(5)隠れDRG、数千万円の増収減収もあり試算が必須

 続いて、「短期滞在手術等基本料」(いわゆる「隠れDRG」)の影響も重要なチェックポイントです。

 304病院を対象にした湯原の試算によると、在院日数を変更しなかった場合、年間数百万円程度の増収減収程度の影響となる病院が多いですが、中には数千万円以上の増収減収の影響が出る病院もあります。対象となる手術などの症例数が多い病院においては、短期滞在手術等基本料の試算が必須です(参照:下図、短期滞在手術等基本料によるインパクト、304病院)。

  ※対象手術等については、第272回中央社会保険医療協議会 総会(2月12日開催)の厚労省配布資料(別紙1-1(医科診療報酬点数表))の「医科-入院料等-65/71」以降のページを参照。 http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000037011.pdf

※対象手術等については、第272回中央社会保険医療協議会 総会(2月12日開催)の厚労省配布資料(別紙1-1(医科診療報酬点数表))の「医科-入院料等-65/71」以降のページを参照。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000037011.pdf

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視点(6)知らないと半減、救急医療管理加算の見直し

 最後に、「救急医療管理加算」の見直しも必須のチェック項目です。

 これは入院時に重篤な状態の患者に対して算定されるものですが、今回の改定により、厚労省が示す「意識障害または昏睡」など9つの具体的な重篤状態に該当しない場合、「救急医療管理加算2」として評価を半減させ400点となります(9つの状態に該当すれば「救急医療管理加算1」)。また、救急医療管理加算2を算定した場合、年に一度、該当する患者の概要について報告義務を課しました。医療機関によっては大きな影響が出ますので、必ずチェックしておいてください。

 以上、「GHC名物コンサルが教える2014年度改定の6つの要点」、いかがでしたでしょうか。今回は告示後の速報ということもあり、改定情報はごく一部のものでしたが、随時、改めて続報を発信していきます。

【参考資料】
平成26年度診療報酬改定について

【参考URL】
今期診療報酬の各項目点数が明らかに!(2014年2月14日GHCブログ)
2014年度改定 亜急性期病床廃止、「地域包括ケア病棟」の登場(2014年1月30日GHCブログ)
中医協総会 DPC制度2014年度改定内容の大部分が決定(2014年1月24日GHCブログ)
今年最初の中医協総会が開催 次期診療報酬改定の骨子が決定!!(2014年1月16日GHCブログ)