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2014年06月27日

非営利ホールディングカンパニーは機能するのか、検討会で本格的な議論スタート

 政府の成長戦略の目玉の一つ、複数の医療法人や社会福祉法人の一体的経営が可能となる「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」(仮称)。その創設を検討する「医療法人の事業展開等に関する検討会」が6月27日開かれ、厚生労働省が示した主な論点に基づいて、本格的な議論が始まりました。

非営利ホールディングカンパニー型法人の本格的な検討がスタート

非営利ホールディングカンパニー型法人の本格的な検討がスタート

 非営利ホールディングカンパニー型法人に参加する特定の一法人に発言力が集中しないための仕組みや非営利性の堅持などを条件に、創設に前向きな意見がある一方、参加法人のメリットが不明確など期待されるように実際に機能するのか、疑問視する声もありました。

 確かに、米国の同様の事例などに目を向けると、強力なリーダーシップや明確なメリットがなければ、今回のホールディングカンパニー型の法人は機能しないように見受けられます。今後、ホールディングカンパニー型の法人について、新たな枠組みだけを作るだけではなく、実際に新たな法人形態として機能する仕組みにできるかどうかの議論が焦点になりそうです。

目指すは年内結論、官庁横断型モデルも

 非営利ホールディングカンパニー型法人制度は、政府が6月24日に閣議決定した成長戦略「『日本再興戦略』改訂2014」に盛り込まれた目玉の一つ。地域内の医療・介護サービス提供者の機能分化や連携を推進して、医療、介謹サービスの効率化・高度化を図り、地域包括ケア実現のけん引材料の一つにする狙いがあります。

 多様な非営利法人(自治体、独立行政法人、国立大学法人等を含む)が参画するグループ全体で円滑な資金調達や余剰資金の効率的活用を実現したり、そのほかの医療・介護事業を行う営利法人と緊密に連携したりできるようにするため、現行規制の緩和について検討し、年内に結論を出すことになっています。

 文部科学省が所管する大学から切り離して別法人化した大学附属病院、自治体や独立行政法人などが設置する総務省所管の病院も非営利ホールディングカンパニー型法人に参画できるようにすることも求めています。

「ホールディングカンパニー」の名称は避けるべき?

 この日の会合で厚労省が示したのは、非営利ホールディングカンパニー型法人が意思決定をするための仕組み、傘下の法人間で資金の融通を行う仕組み、非営利性をいかに確保するか――など7つ(詳細は以下の図表参照)。意思決定の仕組みや非営利性の確保に関連する事項に意見が集中しました。

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 日本医師会は、「『統括医療法人(仮称)』制度の提案」(図表参照)と題する意見書を提出。今村定臣常任理事は、「『ホールディングカンパニー』は営利目的の印象がある。非営利原則を堅持しつつ、地域の医療機関が有機的に連携できるようにするため」とあえて「ホールディングカンパニー」の名称を使わずに、別名称で明記した理由を説明しました。

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 その上で今村氏は、複数法人の代表者から成る「社員総会」について、一法人の発言権が極端に強くなることのないように、「社員総会の議決権は、拠出・出資額、規模等にかかわらず一社員一票とする」など20項目を要望しました。

 非営利ホールディングカンパニー型法人の意思決定について、浦野正男委員(全国社会福祉法人経営者協議会総務委員長)は当該地域の自治体や地域住民の意見にしっかりと耳を傾けた上で意思決定することの重要性を強調し、それがないと「サプライヤーの都合のみになる」と釘を刺しました。

非営利堅持では「看護」に穴が空く

 一方で、日野頌三委員(日本医療法人協会会長)は「非営利である限りリターンがない。どの範囲の地域で展開するのかもイメージできない。出資者に篤志家が出てくるような時代でもない」と、出資者が集まってくるイメージが湧くような議論を求めました

 橋本英樹委員(東京大学大学院教授)は「非営利法人のみを前提にしているが、営利法人が多い訪問看護ステーションについてはどう考えるのか。地域医療の推進が重視される中で、『看護』の領域に大きな穴が空くことになる」とし、非営利の徹底には現実問題として難しい側面もあると指摘しました。

 非営利を徹底する一方、医療界の自発的な非営利ホールディングカンパニー型法人の設立や参加を促し、中立公正な意思決定を可能にする一手法として、梶川融委員(日本公認会計士協会副会長)は、「社員総会の社員選任を地域の自治体や住人に委ねるデュープロセスもあり得るのではないか」などと提案しました。

名称は「統括医療介護法人」などの案も

 「非営利ホールディングカンパニー型法人」という名称をめぐっても意見が交わされました。日医は「統括医療法人」という名称を提案していますが、この日は「介護」の文言が必要だとの指摘もあり、今村委員は日医内部で検討を進めた過程で、「統括医療介護法人」という案も挙がったことを明かしました。