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2014年06月30日

【コンサルに聞く】医療情報もマイナンバーに一元化、今後の着眼点は?

 医療情報もマイナンバーに一元化――。2016年に導入される個人情報を1つの番号で管理する「マイナンバー制度」に、健康保険証なども2020年をメドに一元化されることが決まりました

32年度メドに健康保険証などをマイナンバーに一元化 新IT戦略決定(※2014年6月26日時点でリンクあり)

※写真はイメージです

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 当初、マイナンバー制度は健康保険証とは切り離して運用するとの話でしたが、導入から4年遅れでの統合となります。2025年に向けた病床機能分化や医療・介護連携、在宅医療の推進などにも活用されることが決まったマイナンバー制度。医療分野の情報も一元化されるに至った背景や今後の着眼点などについて、GHCコンサルタントの湯原淳平に聞きました。

患者にも保険者にも選ばれる病院へ

――医療情報がマイナンバーに一元化されます。

 6月24日に閣議決定した「『日本再興戦略』改訂2014 -未来への挑戦-」に書かれていた内容ですね。62―63ページに書かれている以下の内容がそれです。

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上記の該当項目の中でも特に重要な箇所に下線を引きました。

 2016年度に導入されるマイナンバー制度開始から4年遅れで医療情報もこの中に組み込まれるのは、健康保険証の一元化に当たって、その周辺環境を整える必要があるからだろうと考えています。厚労省は、土台となる地域の法人や市町村のクラウド化を進めた上で健康保険証を一元化しないと、現場に混乱が生じる可能性が高いと推測したのでしょう。

 また、以下の診療・介護報酬改定とマイナンバー導入の流れを整理した表を見ていただくと分かる通り、2018年の同時改定後の一元化が計画されています。

図表2:診療・介護報酬改定とマイナンバー導入の流れ

図表2:診療・介護報酬改定とマイナンバー導入の流れ

――健康保険証が電子化されることで、何が期待されますか。また、今後の着眼点は。

 それは、地域における適正な医療提供体制の整備と、効率的な医療の提供、そして予防、医療、介護、福祉の連携です。政府が2025年に向けて急ピッチで進める病床機能分化や医療・介護連携、在宅医療の推進などの追い風になるでしょう。

 一方、「電子化」という言葉だけを聞くと、なんとなく時代の趨勢のようで良さそうに聞こえますが、保険者機能が強化され、アメリカの民間保険まではいかないまでも、患者の受診行動に対して何らかの制限が掛けられる可能性も出てきます

 日本医療の大原則である「フリーアクセス」と「国民皆保険」の両立が難しくなっている今、患者にも保険者にも選ばれる病院にならないと、診療報酬を得られず、病院経営が成り立たなくなる可能性が高まると推測しています。「そんな時代は来ない」と思われていた病院経営者の方もいらっしゃったかと思いますが、医療情報がマイナンバー制度に組み込まれることが決まったのですから、時代の一歩先を見据えて「そんな時代の到来は不可避」と考えて経営に当たった方が、賢明なのではないでしょうか。