GHCブログ

2014年07月08日

【コンサルに聞く】伸び悩む医療連携に欠かせない3つの視点

※写真はイメージです

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 政府が目指す社会保障制度改革の実現のメドとなる2025年に向けて、急ピッチで制度改革が進んでいます。医療分野の改革で重要なキーワードは、「機能分化」と「連携」。これに先行して推進されている病院機能の一つが、「地域連携室」です。

 ただ、地域連携室がその役割を果たすには、課題も多いのが現状のようです。

 GHCが保有するデータを分析したところ、退院調整加算の平均算定率は6.1~9.0%と、9割以上の医療機関が65歳以上の患者の退院が計画通りにできていない可能性が高いことが分かりました。

プレゼンテーション1

 なぜ、予定通りに患者を退院させることが難しいのでしょうか。地域連携を推進する上で、どのような課題があるのでしょうか。地域連携に詳しいGHCマネジャーの塚越篤子に聞きました。

「踏ん張りどころ」乗り越えるための使命感

 地域連携は地域ごとにさまざまな課題を抱えており、一概に「これが具体的な問題解決策」と指摘することはできませんが、共通する大まかな問題点に言及することはできます。3つあります。

 1つは仕組みの問題です。例えば、入院初日に医療者と家族の面談日を決めてしまわないと、スムーズな退院支援計画の作成はできません。これが院内に仕組みとして根付いていないのであれば、その必要性の周知を徹底し、仕組みとして根付かせるための調整が必要です。必要な仕組みは病院によりさまざまで、こうした必要だができていない仕組みの洗い出しと、その対策を個々の病院で徹底すべきでしょう。

 2つ目は知識の問題です。診療報酬に関する制度の理解や院内情報、近隣の医療機関の情報収集は欠かせません。地域連携室は、地域医療の窓口の位置付けです。蓄積した知見を用いて、最適な連携方法を提案できなければ、ただの伝言係であり、地域連携室の存在意義は薄れます。

 3つ目は意識の問題です。地域連携は今後の地域医療を担う重要な役割です。難しい問題を解決するための「踏ん張りどころ」は、日常茶飯事にあるでしょう。こうした「踏ん張りどころ」を乗り越えるためには、高い志に基づく使命感が必要だと、私は思っています。

最近のトレンドは「Wet」な対応?

 また、最近のトレンドとして個人的に注目しているのが、「Wet」な対応です。あるコンサルテング先の急性期病院では、患者を紹介してくれた地域の診療所などの医師に直接、手術が終わったら「安心してください、無事に手術が終了しました」と一報入れることを必須にしています。数分のことですが、この威力は絶大で、この病院の紹介率は約半年で跳ね上がりました。

 重要なことは、「いかに連携先の満足度を高めることができるか」であり、専門特化しがちな医療従事者が、幅広い視点でこのことに気付き、行動するようになれば、地域連携の稼働率は確実に向上するでしょう。

 以上、塚越による地域連携の解説は、9月末に発行の「隔月刊 地域連携 入退院支援」で詳細に述べさせていただく予定です。地域連携に特化した素晴らしい専門誌ですので、ご興味がある方はご一読いただいてはいかがでしょうか。