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2014年07月14日

【書評】人事評価制度は最強の経営改善ツール、先進事例と全国調査も

『必ず役に立つ病院人事評価制度導入の手引き』

『必ず役に立つ病院人事評価制度導入の手引き

 人事評価制度ほど、経営改善、組織活性化を左右するツールはない――。

 人事評価制度の導入を軸に、大幅な経営改善を実現させた松阪市民病院(三重県松阪市)。その立役者である同病院の総合企画室副室長の世古口務氏がこのほど上梓した『必ず役に立つ病院人事評価制度導入の手引き』を読了しましたので、情報共有させていただきます。

 本書には、同病院が全国公立病院に対して実施した「人事評価制度調査報告」も盛り込まれていて、人事評価制度の導入を検討中の病院にはとても参考になると思います。

成功するための3つのポイント

 松阪市民病院は三重県中部に位置する328床の自治体立病院で、1989年以降は約3億-10億円の単年度赤字が続いていました。それがDPC/PDPS制度への参加と人事評価制度の導入などを機に、院内の意識改革が行われたことで、2009年から5年連続で経常収支黒字化を達成し続けています。

 本書では、経営改善の原動力となった人事評価制度の導入のポイントや、職種ごとに導入した人事評価制度を詳細に解説しています。

 本書によると、人事評価制度を導入する際に課題となるのは、(1)職員が納得する業績評価方法(2)公務員の給与制度(3)原資の確保の大きく3点あるとしています。これらの課題をどのようにクリアしていったのか、実例に基づいて詳しく解説しているのが本書の前半の読みどころです。医師、看護師、コメディカルといった職種別に「すぐに使える」レベルにまで落とし込んで、図表なども交えて分かりやすくまとめられています。

「職場が活性化した」導入病院の6割

 後半の読みどころは、全国の自治体病院を対象に実施した人事評価制度調査報告です。調査は全国の922病院が対象で、有効回答数は459病院で回収率は約50%。筆者は、各地で病院経営改善の講演会を開催してきたため、そのことが高い回収率につながったと見ています。

 調査結果によると、人事評価制度を「導入している」が52.3%で最も多く、次いで「導入予定なし」19.6%、「導入予定あり」17.4%、「その他」10.7%の順。このうち、「導入している」と回答した病院に導入の成果を聞くと、「職場の活性化」が最も多く57.8%、次いで「人材育成における活用」48.9%、「公平な処遇の実現」30.7%などの順でした(複数回答)。

 そのほかにも大変興味深い調査結果が掲載されていますので、ご興味がある方はぜひ、ご一読を。

 最後に、本書のあとがきで個人的に共感した部分を紹介します。

 「現在の病院に勤務する若い職員は、病院といえども一般の企業と同じような職場と考えています。病院の上層部も病院は特殊な職場であるという、これまでのような古い考え方から脱却し、現場の職員が満足し、働きやすい職場環境にしていかなければなりません。(中略)病院に勤務する職員に満足感が得られないような病院では、患者・家族にも満足していただける医療は提供できません」