事例紹介

2018年11月13日

【病院事例】DPC特定病院群目指し3部署連携でデータ分析「メディ・ウォッチ・ジャーナル(リープ・ジャーナル)」もフル活用|生長会府中病院

病院名 社会医療法人生長会府中病院 設立母体 民間病院
エリア 近畿地方 病床数 380
病院名 社会医療法人生長会府中病院
設立母体 民間病院
エリア 近畿地方
病床数 380
コンサルティング期間 7年間
病院ダッシュボードχ
  • ・DPC分析
  • ・財務分析
  • ・マーケット分析
  • ・外来分析

 年間5000台を超える救急車を受け入れ、泉州北部の救急医療を担う社会医療法人生長会府中病院(大阪府和泉市、380床:うちHCU10床、ICU4床、回復期リハ26床)。さらなる急性期機能の向上をはかり、高度急性期病院のシンボルとも言えるDPC特定病院群(旧II群)を目指しています。そのための手段の一つとして「病院ダッシュボードχ(カイ)」を活用。サポートサービスの一つである月刊レポート「メディ・ウォッチ・ジャーナル(リープ・ジャーナル)」もフル活用し、「急性期らしさ」を日々、高めています。

心不全の地域連携パスを検討

 同院では、病院ダッシュボードχを(1)企画室、(2)地域医療連携室、(3)医療情報課――の3部署でDPC分析チームを結成し活用しています。

 企画室では、主に係数分析を中心に活用しています。DPC特定病院群を目指す同院最大の課題は、「診療密度」と「難易度(高度な医療技術の実施)」の要件です。診療密度を高めるための「王道」は、平均在院日数を短縮し、1日当たりの資源投入量を高めること。中でも、医療機関が担う役割や機能を評価する「機能評価係数II」のうち、全国の医療機関における在院日数短縮の努力を評価する「効率性係数」の対策は重要です。

 病院ダッシュボードχを用いれば「平均在院日数を1日短縮すればどれだけ診療密度が上がるのか」が明らかになります。また、どの診療科のどの疾患に問題があるのか、自分たちで探しにいく手間がいらず、院内全体の課題を俯瞰し、改善点を一目で見つけることができます。そのため、効率性係数はもちろん、そのほかの切り口でも改善点を瞬時に発見し、アクションに移すことができるのです。

 具体的には、効率性係数の向上において、企画室は在院日数の長い症例を定期的に報告し、改善を進めています。例えば、救急で入ってくることが多い心不全。増悪や緩解を繰り返し、徐々に機能が低下していく心不全は、重症度がバラつきやすいです。ましてや、予定入院ではない救急入院となると、在院日数がバラつき、平均在院日数が増加する大きな原因となります。

 この状況を確認した企画室は、病院ダッシュボードχでデータを見える化した上で、医師たちと協議。その結果、生長会グループはもちろん、グループ外の他の医療機関も含めた5病院との間で、心不全の地域連携パスを作成することを決めました。GHCマネジャーの冨吉則行は「地域連携パスは、脳や頸部骨折ではよく見かけるが、心不全では珍しい。全国的に見ても非常に珍しいパスの誕生に結びつくきっかけになるのではないか」と、同院の取り組みに関心を寄せています。

改善の新たな視点もたらすユーザーサポート

 企画室では、病院ダッシュボードχおよびDPC分析システム「EVE」のユーザー向けに毎月発行するベンチマーク研究誌「メディ・ウォッチ・ジャーナル(リープ・ジャーナル)」も重宝。毎月必ずチェックし、掲載された分析テーマごとに自病院の状況を確認し、改善活動を推進するきっかけの一つとしています。

 例えば、2018年5月の特集「新設『入院時支援加算』へ取り組む前に『入退院支援加算』の見える化を!」として掲載した入院時支援加算。入院時支援加算は、退院時に1回200点を算定できる加算ですが、入院前からの退院支援を評価する入退院支援加算を算定していないと、入院時支援加算の算定対象は大幅に狭まります。

 同院ではこれまで、そもそも入院時支援加算に注目していませんでした。ところが今回の記事をきっかけに、病院ダッシュボードχで自病院の入院時支援加算の算定率を確認すると、非常に低いことが判明。さらに確認していくと、そもそも入退院支援加算の算定率も低いことも分かってきました。そこで両加算の算定率向上の手順も書かれている記事を参考に、両加算の算定率向上に向けて動き出したのです。

SWOT分析、請求漏れチェックなどにも

 地域医療連携室では、全国のDPC対象病院の疾患別症例数などが分かる「マーケット分析」を活用しています。マーケット分析は、地図上に疾患別の症例数分布が確認できるため、自病院を含めた周辺の病院が、どの疾患に強いかがひと目で分かります。さらに、マーケット分析の個別機能「SWOT分析」は、当該医療圏での自院の強みと弱みをデータに基づき正確に分析するため、領域別、疾患別に自病院のシェアとボリュームを瞬時に知ることができます。

 医療情報課では、主に請求漏れチェックなどに活用しています。例えば、機能評価係数IIのうち各医療機関における患者構成の差を1入院あたり点数で評価する「複雑性係数」。複雑性係数では、疾患ごとの副傷病チェックの漏れを確認することが重要ですが、これを確認するには骨が折れます。病院ダッシュボードχでは、副傷病チェック漏れを一覧し、どの疾患で漏れが多いかを瞬時に知ることができます。

 競合ひしめく大阪府の医療圏において、このようにベンチマーク分析に基づいて周囲の状況と自病院の立ち位置を知り、その上でデータに基づいた戦略を立案することは重要です。それを一部署が担うのには限界もあり、府中病院のように多部署で病院ダッシュボードχを活用し、データ分析の相乗効果を生かすことは、病院再編時代の生き残りには欠かせません。


社会医療法人生長会府中病院
住所:〒594-0076 大阪府和泉市肥子町一丁目10番17号
https://www.seichokai.or.jp/fuchu/