GHCコラム

2021年12月21日

院内の理解と創意工夫で好循環、他病院アイデアも積極活用|いまきいれ総合病院(DPC委員会:Case2)

病院の経営企画の現場にフォーカスする連載コラム「わたしの病院の」シリーズ。個々の病院がどのような仕組みで、どのように経営分析ツールを活用しているのか、その事例をいくつかのテーマに沿って紹介する。今回のテーマは「DPC委員会」。


2021年から新たなスタートを切った公益社団法人昭和会 いまきいれ総合病院(鹿児島市、350床)は、救急医療、がん医療、周産期医療を主に行う急性期病院です。同院のDPC委員会は、どのように運営されているのでしょうか。その概要とポイントを解説します。

DPC委員会の概要
目  的 データ分析に基づく経営改善(現状確認と今後のアクションの検討)
開催回数 4回/年(2月、5月、9月、11月)
※2021年はコロナ禍の影響で9月は休止で資料提供のみ
開催時間 45分以内
参加人数 25人
委員構成 院長 診療部長 医事課 診療情報管理課 薬剤課
資料作成 約10ページ
所要時間は約60分(作成は医事課、診療情報管理課)

移転を機に「経営改善」を前面に

鹿児島市下竜尾町にて開院以来80年超の歴史がある同院は2021年1月1日、鹿児島市の中心部からほど近い高麗町(旧鹿児島市交通局跡地)に移転(写真)。新たなスタートを切りました。

いまきいれ総合病院

これまで、移転が経営における最優先課題でしたが、移転が落ち着いた同年4月からは、これまで以上にそのほかの経営改善に注力できる環境が整いました。今給黎和幸理事長、濱崎秀一院長など経営陣は特に、「病院ダッシュボードχ(カイ)」を積極的に用いたデータ分析に基づく経営改善に大きく期待。がん診療連携拠点病院の有志たちによる経営改善勉強会「CQI(Cancer Quality Initiative)研究会」に参加した院内の外科医である小倉診療部長(DPC委員会委員長)が経営改善に向けたデータ分析に興味を示しているなど、さらなる経営改善を推進する下地は整っていました。

こうした中、具体的なデータドリブンの改善活動を展開する場として、DPC委員会の活動内容に注目が集まりました。

半年余りで副傷病割合が向上

現在、DPC委員会は医事課と診療情報管理課が事務局となり運営。情報共有や注意喚起、経営改善に向けた検討を行うため、「現状の数値確認」と「今後のアクションの検討」の大きく2つの軸に基づき(具体例を後述)、いくつかのテーマについて議論しています。開催回によって内容は異なりますが、具体的なテーマと作成される資料は以下のイメージです。

• 症例検討
• 新規高額薬剤(DPCコード追加、出来高情報)
• 救急医療管理加算
• コーディング事例
• システム/運用改善
• ダッシュボードχ/電子カルテデータ分析
• 機能評価係数対策/勉強

例えば、コーディング事例では副傷病名のチェック漏れがないかなど現状のデータを確認し、医療現場の実態と照らし合わせながら、どうすればチェック漏れを減らせるかなどを検討していきます。以下の副傷病月次推移のグラフを確認しつつ、実際のDPC委員会にて「現状の数値確認」と「今後のアクションの検討」をどのように進めたのか具体例を見てみましょう。

「病院ダッシュボードχ」の中央値のデータを活用し改善の成果が目に見える状態に
「病院ダッシュボードχ」の中央値のデータを活用し改善の成果が目に見える状態に

「現状の数値確認」では、「どうすれば『病院ダッシュボードχ』の中央値以上になれるかを思案します。DPC委員会で思案した結果、「今後のアクションの検討」として、2回の病名確認(資源病名・副傷病)を追加することとしました。具体的には、1回目に診療情報管理課がDPC期間Ⅰで確認し、2回目として医事課がDPC期間Ⅲ超で確認するという具合です。これを着実に行うことで、副傷病割合が上昇していきました。

さらにここ最近では、副傷病割合が中央値よりも低い月があり、副傷病分岐があるデータを対象として病名監査を実施。中央値を上回る割合が高い月は、資源病名違いや副傷病漏れがなく、割合が低い月は、資源病名違いや副傷病漏れが確認されました。病名監査を通じても、やはり中央値(15%前後)が1つの指標となることを再確認し、さらなる病名違い・漏れを防ぐ施策を、次回委員会でも検討していくことにしました。

こうした現状と今後を検討するための資料作成をする際、「病院ダッシュボードχ」を有効活用しています。副傷病名以外でも係数や地域連携に関する以下のメニューは比較的よく使っています。

• 病名分析>定義副傷病
• 係数分析>機能評価係数Ⅰ・Ⅱ
 — 救急医療係数
 — カバー率係数
 — 病棟薬剤業務実施加算
• 地域連携分析>紹介分析

2021年4月以降、経営改善活動の成果が各所で見られるようになりました。重点的に改善活動をしてきた副傷病割合は7%向上。副傷病の取り組みは資源病名精査にも波及しています。またDPC委員会から医局会へ各種提言を行うようになったり、薬剤管理指導料の算定最適化など他部署の改善活動の機運も高まったりしています。新たに加算算定の最適化を支援する「チーム医療plus」(病院ダッシュボードχのオプション機能)の導入も決め、さらなる改善活動の強化を目指しています。

左から医事課の坂口聖治氏、診療情報管理課の山内久法氏、畑中幸子氏
本記事はリモートで取材対応いただいた。左から医事課の坂口聖治氏、診療情報管理課の山内久法氏、畑中幸子氏

移転後、急速に改善活動を推進してきた同院ですが、経営改善への貢献を意識する医療スタッフも多く、経営幹部からの期待も大きかったこともあり、目立った医療現場からの反発などもなく、順調に経営改善が進み、改善が改善を呼ぶ好循環につながっているようです。

院内全体のモチベーション高める院内広報

さらなる改善風土の醸成に弾みを付けている同院独特の取り組みもあります。DPC委員会の事務局による創意工夫と、「病院ダッシュボードχ」のユーザー同士のつながりによる院内広報です。

DPC委員会による一連の改善活動の状況は、院内のポータルサイトやメーリングリストで報告するほか、職員向けの掲示板でも紹介しています。この掲示板での取り組みですが、できるだけ多くの職員の目に留まるよう、全体的に明るく、キャッチーに、分かりやすく構成されたデータとして掲示されています(写真)。

掲示板

例えば、写真は「診療単価UP取り組み報告」として、なぜ副傷病名の適切な記載が必要なのかが視覚的に理解できる解説、副傷病名の算定率や金額の推移、診療科別によくある副傷病名リストの表などです。診療科別の詳細情報がプリントアウトされたペーパーも用意してあり、医師らがこれを持ち帰って確認できる工夫もなされています。

これを初めて掲示板に掲示した際には多くの職員が集まり、今給黎理事長ら経営幹部からの労いの声がけもあり「新入職員も含めて管理部門からさまざまなアイデア出しをしつつ楽しみながら作成しています」(畑中氏)と、院内全体はもちろん、作成者自らのモチベーション向上にもつながっているようです。

さらに掲示板のアイデアの中には、他病院のアイデアも含まれています。前述の診療科別によくある副傷病名リストの表は、病院ダッシュボードχのユーザー会「病院経営データ分析塾」に参加された際、同じユーザー病院の取り組みをヒントに採用したもの。院内だけではなく、院外の経営改善の知恵までも貪欲に取り入れ、改善が改善を呼ぶ好循環に拍車をかけています。

連載◆わたしの病院の「DPC委員会」
(1) 変われる機会見極め、「今」の検証こそ重視を|静岡市立静岡病院
(2) 院内の理解と創意工夫で好循環、他病院アイデアも積極活用|いまきいれ総合病院