2013年09月25日
病院名 | 済生会福岡総合病院 | 設立母体 | 公的病院 |
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エリア | 九州地方 | 病床数 | 380 |
病院名 | 済生会福岡総合病院 |
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設立母体 | 公的病院 |
エリア | 九州地方 |
病床数 | 380 |
コンサルティング期間 | 11年間 |
済生会福岡総合病院は、低迷していた「重症度、医療・看護必要度」のデータ精度向上に、客観的データ分析に基づき成功した事例です。
同病院がある「福岡・糸島医療圏」は2つの大学病院をはじめ、国立病院機構や日赤、大手グループの急性期病院がひしめく全国でも有数の病院激戦区です。今後、医療機能の再編の過程で淘汰が進むのは避けられそうにありません。ただ、急性期を脱した病態の患者を受け入れる後方病院の整備も進んでいるため、同病院では将来も急性期一本での運営を目指しています。
同病院では2011年には、「重症度・看護必要度」(当時)による評価で重症に該当する患者の受け入れ割合が低水準で推移していました。大学病院本院並みに診療密度が高い「DPC特定病院群(DPC病院Ⅱ群)」に位置付けられ、平均在院日数も11日前後と全国的にもかなり短い水準なのに、重症患者の割合がなぜ低いのか、理由を見いだせずにいました。折しも翌年の診療報酬改定では7対1の算定要件が見直され、重症患者の割合の基準が、それまでの「1 0%以上」から「15%以上」に引き上げられました。同病院が改善に取り組み始めたのは2012年の5月です。
当時、救命救急センターを整備していたため、同病院ではこの基準をクリアできなくても7対1の算定が認められていました。それでも改善に着手したのは、こうした免除規定がいずれなくなると想定していたからです。実際、その読みは2014年度の改定で的中しました。
まずは現状の把握が重要です。同病院では、2012年1月から3月に退院した患者のうち一般病棟のデータを抽出し、病床規模が同じくらいの全国の急性期病院と比較しました。すると、重症患者の割合は10%前後と、「15%以上」の基準を大幅に割り込み、ほかの病院と比べても低い水準だと分かりました。
次に、重症患者の割合がどの領域で低いのかを明らかにするため、「重症度・看護必要度」とDPCのデータを患者単位でリンクさせ、MDC2桁(主要診断群)の状況をほかの病院と比べると、調査した16分類のうち「眼科系疾患」と「女性生殖器系疾患」を除くすべてで他病院の水準を下回ることが分かりました。中でも心不全では、比較対象にした病院の中で最も低く、他病院の水準と20ポイント近く差がありました。
さらに分析を進めて明らかになったのは、▽実際に行った医療行為が「重症度・看護必要度」のデータに反映されていない▽入院患者の重症度を評価する際のスタッフの判断基準にばらつきがある▽救命救急センターでの治療を終えて一般病棟に転棟した日の評価が、「重症度・看護必要度」のデータに反映されていない―といった状況です。
極端に割合が低かった心不全の測定データをDPCデータと見比べると、「心電図モニター」や「シリンジポンプの使用」といった医療行為を実際には行っているのに、「重症度・看護必要度」の評価票のうち、どのような医療行為を行ったかを患者ごとに記録する「A項目」にチェックされていなかったり、身体機能を評価するB項目でもDPCデータとの整合性が取れていなかったりすることが分かりました。
こうした評価漏れを解消するため、同病院では半年に一回、定期的なデータ分析を実施し、スタッフの意識と知識を高めました。また、患者一人一人の評価内容を看護師長など幹部2人以上が毎日チェックするルールを決め、確認の方法も統一しました。さらに、院内のSE部門が医事データと連動させながらA項目の内容をチェックできるツールを開発し、医事課は実際に行った医療行為がきちんと医事データに反映されているかどうかという視点から看護部のサポートを開始しました。
その結果、病院全体での重症患者の割合は2014年8月以降は15%以上になり、同年11月には17・8%、12月には18・6%、翌15年1月には19・1%と安定した数値を維持しています。ただ、全部で6つある一般病棟の中には基準値の15%を割り込む月もあり、引き続き測定精度の向上が必要です。現在の仕組みでは、重症患者の割合の基準は病院全体で15%以上をクリアすれば7対1の算定が認められますが、近い将来、病棟ごとに評価されるようになるのではないかと想定し、同病院では病棟の再編成も視野に入れて病棟や疾患別の状況を定期的にシミュレーションしています。
このような評価漏れは、実はどの病院でも発生しています。多くの病院の看護部では、こうした取り組みが病院経営上、どれだけ重要かを十分に認識できていません。入院患者の重症度を正確に測定できるようにするため、院内監査を実施したり、外部研修の受講を推奨したりする病院もありますが、済生会福岡総合病院のように客観的なデータに基づいて定期的に検証しているケースはまれです。GHCでは、現場の意識を変えるには病棟業務全体を「見える化」することが有効だと考えています。
広報部 | |
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