事例紹介

2022年12月26日

経営の課題を発見する時間を大幅削減、救急医療管理加算3000万円増加|京都桂病院

病院名 京都桂病院 設立母体 民間病院
エリア 近畿地方 病床数 560
病院名 京都桂病院
設立母体 民間病院
エリア 近畿地方
病床数 560
コンサルティング期間

2022年4月から大学病院本院に準じた高度急性期病院であることを示す「DPC特定病院群」に昇格した京都桂病院(京都市西京区、557床)。新設した経営企画室(関連コラムはこちら)を軸に経営改善を推進した結果、救急医療管理加算だけで約3000万円の収益増加など目覚ましい成果を出しています。当社の経営分析システム「病院ダッシュボードχ」をご利用いただく同院の経営企画室の野崎歩室長にお話を聞きました(聞き手はグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン=GHC=のコンサルタント・佐藤貴彦)。

加納和哉主任、野崎歩室長、野中崇大係長
写真下から時計周りに若園吉裕院長。続いて経営企画室の加納和哉主任、野崎歩室長、野中崇大係長。

マクロからミクロまでの視点で分析できる

――「病院ダッシュボードχ」導入前に抱えていた経営課題について教えてください。

野崎氏:「DPC対策がまだまだできていない」との思いが大きかったです。

DPC分析ソフト「EVE」を使って、診療プロセスの改善や、クリニカルパスの変更などの提案はしていました。ただ、「EVE」だけではその一つひとつの提案をするための課題発見までに時間がかかりすぎていました。そのため、満足できるスピードで改善活動を推進できているとは言えない状況が続いていました。

それが「病院ダッシュボードχ」を用いることで、課題発見までの時間が明らかに早くなり、課題発見までに費やしていた時間がかなり削減できました。導入当時はマクロの分析は「病院ダッシュボードχ」を見て、ミクロな症例ベースの分析は「EVE」を使っていました。今ではミクロの分析も「病院ダッシュボードχ」の新サービス「症例Scope」を使っているので、ほとんどの分析が「病院ダッシュボードχ」で完結するようになりました。

コンサルタントの支援で使いこなせる

――何が「病院ダッシュボードχ」を導入する決め手になりましたか。

野崎氏:さまざまな経営分析ソフトを比較した結果、「病院ダッシュボードχ」はほかのソフトと比べて、圧倒的に使いやすく、分析画面も見やすかったです。

また、GHCコンサルタントの佐藤さんとのやり取りの中で、使い方の説明が分かりやすかっただけではなく、当院の経営課題に対するコメントや提案もいただきながら進めていけたので、どう使っていくべきかをすぐにイメージできました。いただいた提案の中には、我々が気づいていなかった課題の発見などもあり、非常にありがたかったです。

カスタマー・サクセス
GHCはクライアントの成功に向けて伴走する「カスタマー・サクセス」を推進しています(詳細はこちら)。

全員医療従事者の経営企画室

――貴院の経営改善の推進体制について教えてください。

野崎氏:当院の経営改善は「経営企画室」が中心になって進めています。当院の経営企画室の特徴は、3人のスタッフ全員が医療従事者であることです。

スタッフ全員が医療従事者であることへのこだわりは、「経営改善の推進には、事務部門と臨床現場が有機的に連携することが欠かせない」との院長のお考えがあってのことです。

経営企画室へ最初に配属されたのは薬剤師の私で、その後、臨床工学技士の加納、理学療法士の野中も合流しました。同じ医療従事者同士、さまざまな経営課題を認識しつつも、臨床現場の思いや事情もよく分かっているので、日々の会話の中でお互いに課題を共有し合い、それぞれが自立して課題解決に向けて動いています。

例えば、加納は経営改善に欠かせない情報通信・コンピュータ関連の知識に精通しているので、情報システム部門と連携してシステム的な課題解決を推進したり、野中は臨床現場に入り込んで他の職種とワーキンググループを立ち上げてさまざまな企画をしてくれたり、というようなイメージです。

京都桂病院の外観
京都桂病院の外観

複数加算で成果、活用の幅広げる展開へ

――「病院ダッシュボードχ」の活用でどのような成果が出ていますか。

野崎氏:救急医療管理加算は年間3000万円くらい上がっています。これまでほぼ取れていなかった認知症ケア加算も、院内のフォーマットを作成することで、今では7、8割くらいまではきています。がん患者指導管理料もあがりました。

病院ダッシュボードχ」は、他施設の状況と比較したり、経営改善の取り組み前後を比較したりできることが魅力です。そして経営改善すべき課題がすぐに分かるというところが何よりもいい。

今後はDPC入院期間や入退院のフローの見直しなどにも活用していこうと考えています。集患につながる紹介・逆紹介による地域連携の課題を発見する機能もあるので、新型コロナウイルスの対応が落ち着いてきたら、その辺の機能も活用していきたいです。

――本日はありがとうございました。


経営改善で最重要は「院内の有機的なつながり」

京都桂病院の若園吉裕院長に、新設した経営企画室の狙いや今後の展望についてお聞きしました。

――医療従事者だけで成り立つ経営企画部門は珍しいと思います。

若園院長:まだ人は少ないですが、経営企画の中心になる核となる人が集まってくれたことは良かった。これまで、さまざまな経営改善の取り組みをしてきましたが、やはり経営企画の機能を担う部署は医療従事者が入る方がいいだろうと思っていました。

若園吉裕氏
若園吉裕(わかぞの・よしひろ)氏。医学博士。1985年京都大学医学部卒。松江赤十字病院、京都大学医学部附属病院、愛媛県立中央病院などを経て1995年京都桂病院入職。2016年から現職。京都大学臨床教授。

――今後の経営企画室への期待や展望を教えてください。

若園院長:将来的にはもう少し人数も増やして、院内のさまざまな課題に手を出してもらいたい。

事務部門は決められた定期的な仕事をこなすのに手一杯。臨床現場も日々の患者対応に追われています。日々多忙な部門同士、それぞれが有機的に結びつき、新しい何かを成し遂げるというのは、そもそも非常に難しいことです。

経営という視点だけではなく、医療の質を担保するという視点においても、もっと部門の垣根を超えて有機的につながるべき部分は、まだまだ院内にあります。ですから、経営企画室が院内の各部門を今まで以上に有機的につなぎ合わせる動きに期待しています。

――本日はありがとうございました。

佐藤 貴彦(さとう・たかひこ)
sato株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門アソシエイトマネジャー。慶應義塾大学文学部卒。医療介護系ニュースサイトの記者を経てGHC入社。診療報酬改定対応、集患・地域連携強化、病床戦略立案などを得意とする。多数の医療機関のコンサルティングを行うほか、「日本経済新聞」などメディアの取材対応多数。医療ビッグデータ分析を軸としたメディア向け情報発信や、日本病院会と展開する出来高算定病院向け経営分析システム「JHAstis(ジャスティス)」を担当する。