コンサルに聞く(GHCコラム)

2021年03月15日

入院期間10日超の軽症患者が44%|データが示す「新型コロナ第3波」の教訓(1)

年末年始にかけて新型コロナウイルス感染者が急拡大した「第3波」。「病床過剰なのに病床ひっ迫のなぜ」が指摘される国内の医療提供体制において、どのような問題が起きていたのか――。医療ビッグデータが第3波の「教訓」を示す連載の初回テーマは「新型コロナで入院した軽症者の退院」。発症日から10日経過(かつ症状軽快後72時間)と国が定めた「退院基準」のうち、10日を超えて入院する軽症患者が44%であることが分かりました。

入院患者の多半は軽症者

グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)はこのほど、「第3波(2020年11~12月)」の医療ビッグデータを分析。分析条件は以下の通り。全国の急性期病院(DPC対象病院)の約3割のデータという計算になります。急性期病床の機能を持たない病院は分析対象に含まれておらず、急性期病床に特化した分析であるという点に留意ください。

◆使用データ:DPCデータ
◆データ期間:2020年3-12月退院患者
◆病院数(症例数)※以下は最大数で分析内容によってはそれ以下もある
 —連続データ:410病院(24,764症例)
 —非連続データ:523病院(30,425症例)
◆重症度の定義
 —軽症:酸素吸入なし
 —中等症:酸素吸入あり
 —重症:人工呼吸器あり
 —超重症:ECMO(体外式膜型人工肺)あり

新型コロナで入院する患者を重症度別に見ると、「第3波」では「第2波」と比較して1割程度減ったものの64%。軽症者が6~7割で推移している状況に大きな変化はなく、入院患者の多半を軽症者が占めていることが分かります。重症患者の割合は「第1波」、中等症患者は「第3波」で最も多いという状況です。

軽症者の退院基準は入院日から10日

初回でまず確認したいのは、新型コロナで入院した患者の多半を占める「軽症者の退院」です。

新型コロナ患者の退院基準の一つは、WHO(世界保健機関)の基準に基づき、「発症から10日(無症状の場合は検体採取日から10日)」。これに加えて、解熱や呼吸器の症状改善による「症状軽快」から72時間経過すれば退院できます。

実際、今回の調査では、この「第3波」において、コロナ患者の在院日数中央値を重症度別に見ると、軽症9.0日、中等症13.0日、重症20.5日でした。それぞれの中央値を「第1波」から「第3波」まで比較すると、いずれも大きく在院日数が減少しています。これについてGHC代表取締役社長の渡辺幸子は、「コロナ患者の退院基準が示され、第2波や3波にかけて治療や感染管理の知識・経験が蓄積され、さらにコロナ患者をより多く受け入れるため、多くの医療機関で在院日数を短縮するための努力があったものと想像できます」としています。

第3波の軽症の在院日数中央値が9日であること、発症から何日か経過して入院した患者はより早く退院する(第3波では25%が7日までに退院)ことなどを考慮すると、軽症患者の退院基準の一つの目安は、多く見積もって国が示す退院基準でもある「10日」と考えて差し支えなさそうです。この基準を一つの指標として、基準を超えて入院し続ける割合を「残存率」としてその推移を確認しました。

以下の図表は、10日、14日、30日のそれぞれの在院日数を基準に、重症度別の残存率の推移を検証したものです。それぞれの重症度別残存率を確認したところ、軽症患者で10日を超えて入院する残存率は44.0%。14日を超えて入院する中等症患者の残存率は50.5%でした。

これについて渡辺は、「コロナ患者の在院日数は第2波以降で改善されていますが、次の入院すべきコロナ患者をより多く受け入れるため、退院基準をクリアした患者はできるだけ早く退院を促進させることが必要」としています。

加えて「病院が、本当に入院が必要なコロナ患者を受け入れるため、軽症で重症化リスクの少ない患者は自宅や宿泊施設での療養が望ましい」(渡辺)としており、この点については次回、詳しくデータを見ていきます。

もう一つ渡辺がデータで注目したのは、介護施設に転所する入院患者の平均在院日数が長い点です。

軽症と中等症の患者に限り、コロナ患者の入院経路を「自宅」「他の病院から転院」「介護施設」別にそれぞれの入院期間を確認。さらに、それぞれの退院先を「自宅へ退院」「他病院へ転院」「介護施設へ転所」の3つに分けてデータを分析しました。分析結果によると、入院経路が介護施設である群を除き、退院先が介護施設への入所である場合はすべて、それ以外の退院先と比較して平均在院日数が10日前後長いことが分かりました。

渡辺はこれについて「医療機関と介護施設との連携、つまり病院による介護施設への転所調整の機能が十分でないことを示しています。日頃から介護施設との連携がしっかりとできていない病院であれば、新型コロナのような有事の際だからといっていきなり円滑な連携はできないでしょう」としています。また、「急性期病院は全般的に介護連携が弱く盲点になりがち」とも補足しています。

また、この傾向は新型コロナだけではなく、インフルエンザなどほかの感染症でも同様の傾向が見られます。渡辺は「介護施設側の感染症対策が整っていないという問題もあるでしょう。そのような状況の中で安易に新型コロナ患者を受け入れることによるクラスター発生へのリスクや恐怖心も影響していると思われます」とコメントしています。

連載◆データが示す「新型コロナ第3波」の教訓
(1)入院期間10日超の軽症患者が44%
(2)軽症患者の半数が「重症化リスク低い」
(3)大病院の入院上限10人未満が多半
(4)続く感染症患者の半減、がん受診抑制に注視を

渡辺 幸子(わたなべ・さちこ)

株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの代表取締役社長。慶應義塾大学経済学部卒業。米国ミシガン大学で医療経営学、応用経済学の修士号を取得。帰国後、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社コンサルティング事業部などを経て、2003年より米国グローバルヘルスコンサルティングのパートナーに就任。2004年3月、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン設立。これまで、全国800病院以上の経営指標となるデータの分析を行っている。近著に『医療崩壊の真実』(エムディーエムコーポレーション)など。

佐藤 貴彦(さとう・たかひこ)
tsato

株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門コンサルタント。慶應義塾大学文学部卒。医療介護系ニュースサイトを経て、GHCに入社。診療報酬改定対応、集患・地域連携強化、病床戦略立案などを得意とする。多数の医療機関のコンサルティングを行うほか、「日本経済新聞」などメディアの取材対応や、医療ビッグデータ分析を軸としたメディア向け情報発信を担当。日本病院会と展開する出来高算定病院向け経営分析システム「JHAstis(ジャスティス)」を担当する。