コンサルに聞く(GHCコラム)

2021年03月16日

軽症入院患者の半数が「重症化リスク低い」|データが示す「新型コロナ第3波」の教訓(2)

医療ビッグデータが新型コロナウイルス第3波の「教訓」を示す連載2回目のテーマは、「新型コロナで入院した軽症者の重症化リスク」。入院した軽症患者の半数が、重症化リスクが低いとされる基礎疾患がない64歳以下だったという実態が明らかになりました。

第3波で40歳未満の軽症者は16%減

グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)はこのほど、「第3波(2020年11~12月)」の医療ビッグデータを分析。分析条件は以下の通り。全国の急性期病院(DPC対象病院)の約3割のデータという計算になります。急性期病床の機能を持たない病院は分析対象に含まれておらず、急性期病床に特化した分析であるという点に留意ください。

◆使用データ:DPCデータ
◆データ期間:2020年3-12月退院患者
◆病院数(症例数)※以下は最大数で分析内容によってはそれ以下もある
 —連続データ:410病院(24,764症例)
 —非連続データ:523病院(30,425症例)
◆重症度の定義
 —軽症:酸素吸入なし
 —中等症:酸素吸入あり
 —重症:人工呼吸器あり
 —超重症:ECMO(体外式膜型人工肺)あり

初回で触れた通り、入院患者の多半は軽症患者です。今回はこの軽症患者を年齢別などでもう少し詳細に確認していきます。

まずは新型コロナ患者の重症度分布を、年齢階級ごとに確認します。中等症以上の割合は全期間で40歳以上が高く、「第3波」になって患者数が急増していることが分かります。一方、40歳未満は全期間で軽症が多数を占め、「第3波」で患者数が急増という状況ではありません。

年齢階級×重症度別コロナ退院患者数 3-12月

GHCコンサルタントの佐藤貴彦は「40歳未満のボリュームゾーンである軽症患者に絞り込み、具体的な年齢階級別の割合を確認すると、第2波と比べて、第3波における40歳未満の割合は16%減っています。これは、40歳以上の軽症者が増えたことと、直近の40歳未満で入院する軽症患者が抑制されている可能性があります」と指摘します。

軽症入院患者に占める40歳未満割合は第3波で16ポイント低下

年齢階級に加えて、重症化リスク因子と考えられ、DPCデータで抽出可能な以下のいずれかに当てはまる患者を「基礎疾患あり」として、さらに分析しました。

●悪性腫瘍(がん)
●慢性閉塞性肺疾患(COPD)などを含む「呼吸器系疾患」(DPCコードのMDC04)
●心血管疾患などを含む「循環器系疾患」(同MDC05)
●高血圧や糖尿病、脂質異常症などを含む「内分泌・栄養・代謝に関する疾患」(同MDC10)
●慢性腎臓病などを含む「腎・尿路系疾患及び男性生殖器系疾患」(同MDC11
64歳以下基礎疾患なし コロナ入院患者は5割→宿泊療養で

この分析によると、40歳未満の軽症患者に占める基礎疾患なし割合は約8割、40~64歳では64%でした。重症化リスクが高いとされる65歳以上および65歳未満で基礎疾患ありを除いた軽症の入院患者の割合は50%でした。

この結果についてGHC代表取締役社長の渡辺幸子は「病院が、高齢者や重症化リスクの高いコロナ患者を受け入れるため、重症化リスクの低い軽症患者は宿泊療養で対応することが望ましい。患者が『高齢者と同居している』と入院を望んだり、医師が『入院した方が無難』と考えたりなどして、隔離目的で病床が活用されている事例があれば、入院スクリーニングの対応策が必要です」と指摘しています。

また、ホテルなどのコロナ患者を受け入れる宿泊療養施設は、大都市と地方では確保数に大きな差が生じ、地域差が出る可能性が考えられます。そこで地方よりも潤沢な宿泊施設がある東京に限定して上記の軽症入院患者に占める基礎疾患なし患者割合を確認したところ、東京においてもこの割合は50%と同じでした。

64歳以下基礎疾患なし 東京都だけでもコロナ入院患者は5割

連載◆データが示す「新型コロナ第3波」の教訓
(1)入院期間10日超の軽症患者が44%
(2)軽症患者の半数が「重症化リスク低い」
(3)大病院の入院上限10人未満が多半
(4)続く感染症患者の半減、がん受診抑制に注視を

渡辺 幸子(わたなべ・さちこ)
swatanabe

株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの代表取締役社長。慶應義塾大学経済学部卒業。米国ミシガン大学で医療経営学、応用経済学の修士号を取得。帰国後、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社コンサルティング事業部などを経て、2003年より米国グローバルヘルスコンサルティングのパートナーに就任。2004年3月、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン設立。これまで、全国800病院以上の経営指標となるデータの分析を行っている。近著に『医療崩壊の真実』(エムディーエムコーポレーション)など。

佐藤 貴彦(さとう・たかひこ)
tsato

株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門コンサルタント。慶應義塾大学文学部卒。医療介護系ニュースサイトを経て、GHCに入社。診療報酬改定対応、集患・地域連携強化、病床戦略立案などを得意とする。多数の医療機関のコンサルティングを行うほか、「日本経済新聞」などメディアの取材対応や、医療ビッグデータ分析を軸としたメディア向け情報発信を担当。日本病院会と展開する出来高算定病院向け経営分析システム「JHAstis(ジャスティス)」を担当する。