コンサルに聞く(GHCコラム)

2021年07月19日

【病院経営座談会】放射線部門トップランナーの強みと問題意識とは(済生会宇都宮、聖隷浜松、土浦協同)

医療の質の高さはもちろん、経営の視点においてもトップを走る病院は、その強さのベースに何があり、どのような問題意識を抱えて日々の改善活動を行っているのか――。

経営分析システム「病院ダッシュボードχ(カイ)」のユーザーが集い、同システムのデータ分析結果を軸に、さまざまな経営課題について情報共有し合う座談会。初回は「放射線部門」の経営改善をテーマに、済生会宇都宮病院聖隷浜松病院土浦協同病院の3病院で実施しました(五十音順)。本稿では座談会に至る経緯、情報共有された主なポイントをご紹介します(司会はグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの水野孝一筑後孝夫)。

座談会の様子。コロナ下のため座談会はウェブ会議システムで実施しました(画面左上が土浦協同病院=中央前面は沼尻俊夫放射線部部長=、画面右上が聖隷浜松病院=中央は栗田仁一放射線部技師長=、画面左下が済生会宇都宮病院=左が石川剛医療技術部長兼技師長=、画面中央下が水野、画面右下が筑後)

「『病院ダッシュボードχ』ユーザーアンケートレポート」とは

当社が提供する「病院ダッシュボードχ」は、DPCデータはもちろん、レセプトデータや患者紹介データなど経営に活用すべき院内の複数データをつなぎ合わせ、可視化することで、経営の意思決定をご支援する病院経営分析システムです。経営概観を俯瞰できる従来の特徴に加えて、このほど一般的なDPC分析ソフトと同じく、個別症例の分析やコーディングチェックの機能も備え、ワンストップかつオールインワンの経営支援ツールに生まれ変わりました(詳細はこちら )。

経営概観から個別症例までワンストップ分析できるように生まれ変わった「病院ダッシュボードχ」

病院ダッシュボードχ」のもう一つの強みとして、ユーザー参加型の各種企画があります。「データ+α」の切り口で、さらなる経営支援を目指しています。具体的には、ユーザー会の位置付けで、当社のコンサルタントの知識やノウハウ、トップランナーのユーザー病院の経営改善事例などを共有し合う「『病院ダッシュボードχ』で学ぶGHC病院経営データ分析塾」。毎月、さまざまな経営課題の視点でユーザー病院のデータをベンチマーク分析することで、各ユーザー病院が自病院の現状と立ち位置を確認できるというコンセプトの経営分析レポート「Leap Journal」などです。

こうした「データ+α」の切り口の企画として今回新たに、「『病院ダッシュボードχ』ユーザーアンケートレポート」をスタートしました。この企画は、その時々に注目されている病院経営の話題について、データだけでは見えてこない項目をアンケート形式で質問し、その結果を集計することで、さらなる経営の意思決定に役立てるというものです。具体的には各部門の人員体制や各種業務時間などの情報です。さらには、各病院独自の取り組みやノウハウの共有が期待できる質問も加えることで、ユーザー病院がより有益な「データ+α」の情報を得られます。アンケートは「病院ダッシュボードχ」の管理画面上で行い、その結果は同管理画面上で閲覧できます。

「『病院ダッシュボードχ』ユーザーアンケートレポート」の初回企画は、2021年2月に実施しました。テーマは昨今、多く病院経営幹部が注目しており、注目の一方でデータからはその実態が見えづらい「放射線部門」(臨床検査部門も併せて実施)。当社には放射線技師の資格を持つコンサルタントが現時点で3人おり、その強みを生かして放射線部門のコンサルティング経験が豊富であることも今回のテーマ選定に影響しました。

背景に想定外のトップランナーの存在と知的好奇心

2021年3月にアンケート結果が共有されると、ユーザー病院から多くの反響をいただきました。中でも興味深かったのが、聖隷浜松病院の栗田仁一技師長からのお問い合わせです。

「この病院の放射線部門と連絡を取りたいのですが、つないでいただけませんか」

栗田技師長が着目したのは、CT(コンピューター断層撮影)の「1台あたりCT件数/月×CT造影割合」のベンチマーク結果です。詳細はここでは伏せますが、聖隷浜松病院は放射線部門の長年の実績と努力の結果、国内トップレベルの運用体制でCT検査を行っています。CT検査の中でも造影剤を使った検査は運用が煩雑であることから、栗田技師長は特に造影剤を使ったCT検査の運用は、自病院がトップレベルであるとの自信がありました。

「『病院ダッシュボードχ』ユーザーアンケートレポート」がきっかけに座談会が企画された

聖隷浜松病院がトップレベルであることは変わらないのですが、さらにその上を行く病院が存在することが、今回のアンケート結果から明らかになったのです。栗田技師長が連絡を取りたいとされたのは、このさらに上を行く病院で、問い合わせを受けた聖隷浜松病院のサポートを担当する水野も驚きを隠せませんでした。聖隷浜松病院の放射線部門が、医療も経営の質もトップレベルであることは、放射線技師の資格も持つ水野にはよく分かっていたからです。

水野はこのお問い合わせを社内に持ち帰り、ほかのコンサルタントやカスタマーサクセス部門と協議した結果、「トップランナーの病院同士で座談会を開催したらどうか」との提案に至りました。ノウハウの共有を目的にするのであれば、座談会の形式で自由闊達な議論を行う方がユーザー病院のためになるであろうと考えたことに加えて、「トップを走る病院がどのような運用をしているだろうか」というコンサルタントの知的好奇心もあったからです。

こうして当社の提案に快く応じていただけたのが、聖隷浜松病院のほか、「1台あたりCT件数/月×CT造影割合」のベンチマーク結果で同院と水野を驚かせた済生会宇都宮病院、と土浦協同病院の3病院になります。座談会には各病院の放射線技師を中心に30人近くの関係者が集まりました。

他部門と連携した情報発信も

座談会の内容をここで詳しくお伝えすることはできませんが、各病院の取り組みのポイントと、当社コンサルタントの水野と筑後のコメントを交えて座談会の様子をお伝えします。

栗田 仁一(くりた・まさかず)氏


社会福祉法人 聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷浜松病院 放射線部技師長。診療放射線技師。千葉大学医学部附属診療放射線技師学校卒業。1988年千葉労災病院、1993年聖隷福祉事業団に入職。2014年より現職。


聖隷浜松病院については、今回の座談会を通じて、改めて国内トップレベルの放射線部門であることが分かりました。CTやMRI(磁気共鳴画像)の1台あたり件数はもちろん、きめ細やかで考え抜かれた医療資源配置に基づく運用体制は、他の2病院からも大きな学びがあったとコメントいただいております。「聖隷浜松病院の素晴らしい運用体制は、彼らが時間をかけて改善し続けてきた結果。いきなりこのレベルを目指そうとするのではなく、まずは院内外の信頼を得るため、日々、目の前の課題を一つひとつ泥臭く解決するための知恵と努力があったことに着目することが重要です」(水野)。

また、同院の放射線部門はコロナ前まで学会発表が年度内に20回以上、経営改善計画も部門内で多数計画し、実行してきました。全国的にも注目される同院の地域連携(事例紹介『「月間手術件数」過去最高を更新!データ分析を駆使した地域連携の推進と、コストの最適化が収益改善の鍵』)においても、放射線部門が自立的に他部門と連携し、その役割を果たしてきました。「地域医療連携室と放射線部門が連携し、地域へ部門独自の情報を発信しています。このように地域への情報発信は、地域連携室だけに任せるのではなく、質も価値もネタも鮮度を保ち続けるため、院内の情報は他部署との連携の中で集め、発信する体制づくりが重要です。このことは、放射線部門に限らず院内全体に言えることでもあります」(同)。

聖隷浜松病院の地域連携部門が使う広報誌には放射線部門も大きく関与する

放射線部門の価値とは

「1台あたりCT件数/月×CT造影割合」のベンチマーク結果で聖隷浜松病院を上回った済生会宇都宮病院土浦協同病院からもさまざまな取り組みが共有されました。

済生会宇都宮病院においても、トップレベルと言える1日あたりの治療件数とその背景にある運用体制が共有されました。特に、「患者と診療科のニーズに応える放射線技師の仕事に対する姿勢は素晴らしく、『患者満足度の向上』や『収益増加』に大きく寄与している」(同)と思われます。

石川 剛(いしかわ・たけし)氏


社会福祉法人恩賜財団 済生会支部栃木県済生会宇都宮病院 医療技術部部長兼診療放射線技術科科長。放射線技師。中央医療技術専門学校卒。1987年同院入職後、2008年特殊撮影課長兼医療情報室副室長。2018年医療技術部副部長兼診療放射線技術科科長。2020年より現職。


放射線部門の価値は、大きく(1)患者満足度の向上(2)業務改善=効率化(3)収益増加―の3つで図れると考えられます。前述の済生会宇都宮の事例からは、この(1)と(3)に関わってきます。(2)においては、画像の確定前に当該画像を確認し、必要に応じて画像の修正や不必要な画像の削除を行う「検像」の一元化などが注目されました。検像の一元化は、検像の基準(画質)統一と効率化が欠かせません。そのため、「検像の一元化の事例は初耳」(水野)との認識を示しています。

トップを走る放射線部門は(1)患者満足度の向上(2)業務改善=効率化(3)収益増加-の3つを意識した運用体制になっている

画像検査の外来化は重要な病院経営のトレンド

土浦協同病院もトップレベルの治療件数を誇る一方、座談会では画像検査の外来化への取り組みが注目を集めました。入院してからの画像検査割合が全国平均と比較して圧倒的に低く、全国トップレベルだったためです。

沼尻俊夫(ぬまじり・としお)氏


茨城県厚生農業協同組合連合会 総合病院土浦協同病院 放射線技師部長。シニア診療放射線技師。城西放射線技術専門学校卒。1990年同院入職。2020年より現職。


当社の調査によると、全国300床以上の病院におけるCTの入院検査割合の平均は67.1%。現在、画像検査の外来化は病院経営におけるトレンドワードの一つと言えます。検査の外来化はその分、患者の入院日数の短縮につながり、感染リスクの減少や患者満足度向上、ADL(日常再活動さ)の回復にも大きく影響します。また、DPC制度下においては、入院時の画像検査は収益面においても不利で、医療および経営の質に大きく関わってきます。

画像検査の外来化は重要な病院経営のトレンドワードになっている

本稿では土浦協同病院がいかにして画像検査の外来化を推進してきたのか、その詳細にまでは触れませんが、同院の経営幹部の指示や賢明な判断、さらには一人ひとりの放射線技師の取り組みや経営陣への働きかけが徐々に身を結び、大きな成果へと帰結しました。座談会では、「まさに現場の熱意が院内を動かした」などと評価する声もあがりました。これについて筑後は、「土浦協同病院の入院検査割合は、予定入院がほとんどのがんセンターなどと同レベルの割合で驚異としか言いようがない。そのカギとなったのは、放射線部門からの積極的な院内への情報発信と、その重要性に気づき、積極的に経営に取り入れようとした経営幹部の英断があります。特に現場の医療職が自分たちの頑張りを臆せず積極的に発信することで、院内でさまざまな化学反応が起こり得ることを示した好事例と言えるでしょう」としています。

コンサルの視点:座談会を終えて

今回の座談会では、さまざまな意見交換をしたほか、さらに意見交換したいテーマも見えてきました。そのため、参加者からはまた同じ機会を持ちたいという声が多数あり、第2回目の座談会を実施することも決まりました。初の「『病院ダッシュボードχ』ユーザーアンケートレポート」を軸にした座談会を終えて、水野と筑後は次のようにコメントしています。

「感覚的に捉えられた課題感はデータによってその実態が映しだされます。そして、データは院内の職種も文化も異なる各部門を連携させることができる共通言語です。今医療業界では個別最適を目指したカイゼンではなく、全体最適を見込んだカイゼンが求められています。部門別での経営視点の情報共有に関して、データを活用していくことの重要性を改めて感じました」(水野)

「座談会参加の3病院からは、医療も経営も質の高い病院だからこそ、放射線科にまで課題提案、解決までが求められており、それらに対して真摯に向き合える『底力』が感じられました。一方、現場の底力だけでは乗り越えられない働き方改革にも直面していることも印象的でした。おそらく各病院の事情(設備や人材など)にもよるので、『最適解』はすぐには見つからないでしょう。今回のような場をきっかけに、病院同士に横の交流が生まれ、普段は聞けない(学会でも扱われない)経営に関する悩みや人事・働き方に対する相談ができる環境への第一歩になれればと願っています」(筑後)

各部門のトップランナーが参加する座談会は今後、放射線部門以外も含めて開催予定です。その様子は随時、当社のホームページでお伝えしていきます。


水野 孝一(みずの・こういち)

DPC分析、RIS分析、パス分析、病床戦略、地域連携などの分析を担当し、国立大学病院や公的病院を中心とした複数の改善プロジェクトに従事。入退院サポートセンター開設支援(PFM:Patient Flow Management)や病院職員の生産性向上に関する新規事業プロジェクトに参画している。病院ダッシュボードχ(カイ)症例SCOPE開発メンバー。その他、若手コンサルタントの勉強会のリーダーも務める。

筑後 孝夫(ちくご・たかお)

DPC分析、病床戦略などを得意とし、全国の医療機関における複数の改善プロジェクトに従事。社内の入退院支援センター開設支援(PFM:Patient Flow Management)のプロジェクトに参画するほか、社外では診療放射線技師学会の分科会員、研究会の世話人に任命されている。