事例紹介

2019年05月13日

【病院事例】気がついたらDPC特定病院群、「病院長が使う」の改善効果は計り知れない|製鉄記念室蘭病院

病院名 製鉄記念室蘭病院 設立母体 民間病院
エリア 北海道地方 病床数 347
病院名 製鉄記念室蘭病院
設立母体 民間病院
エリア 北海道地方
病床数 347
コンサルティング期間 4年間

 高度急性期を追求するために開発された多機能型経営支援システム「病院ダッシュボードχ(カイ)」をフル活用することで、2018年度から大学病院に準じる高い診療機能を持つ「DPC特定病院群」(旧DPCII群)に昇格した製鉄記念室蘭病院(北海道室蘭市、347床、19診療科)。2015年4月当時、松木高雪理事長が「データ分析なしに今後の病院経営は立ち行かなくなる」と判断し、病院ダッシュボードχを導入しました。

 松木理事長の即決後、病院ダッシュボードχの利活用を任されたのは、前田征洋病院長(写真)です。同病院長は、「病院ダッシュボードχで急性期らしさを追求した結果、気がついたらDPC特定病院群になっていた。病院長自身が活用することでの改善効果は計り知れない」と振り返ります。具体的にどのように活用することでDPC特定病院群に昇格できたのか――。前田病院長にお話を伺いました(聞き手はグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの塚越篤子シニアマネジャー)。

院内の課題を職員全員で共有

――病院経営の成績表である「病院ダッシュボードχ」のトップページが、ほぼすべて「S」(全国上位5%)か「A」(同25%)。DPCデータや地域連携データなどの各種データの提出も毎回とても早いです。本当に使い倒していただけていると感じ、とてもうれしく思っています。

 おかげさまで、当院の診療パフォーマンスは右肩上がりを続けています。僕が病院長に就任した2015年4月から約4年間、病院ダッシュボードχをフル活用してきたことで、当院の経営は格段に効率化され、気がつけば2018年度からDPC病院特定病院群にもなりました。

 今では非常に強固な経営基盤になり、一日単価が高くなったことで、病床稼働率が90%台でも利益が出ています。病床稼働率が100%でも赤字だった以前から考えると、飛躍的な進化です。

――「病院ダッシュボードχ」を利用し始めた当初の狙いは何だったのですか。

 小手先ではなく、経営の中身を大きく変えないと、どんな状況下でも利益を出せる病院にはなれないと思っていたのです。方向性やゴールを示すことなく、ただ闇雲に頑張るという状況から脱したかった。

 病院ダッシュボードχを使い始めてから徐々に、診療は標準化され、経営が効率化していきました。病院ダッシュボードχとグローバルヘルスコンサルティングをフル活用させていただいたおかげです。

――ありがとうございます。具体的にはどのようにご活用いただいているのでしょうか。

 1つは、電子カルテや院内LANで主要な経営指標が見られるようになっています。このデータのうちのいくつかは、病院ダッシュボードχから得ています。

 例えば、電子カルテに各診療科の経営指標の推移や前年比が見られるようにしたり、院内LANで全職員が各診療科のDPC期間II超率が見られるようにしたりしています。重症度、医療・看護必要度も診療科別や病棟別でリアルタイムに表示されます。診療情報管理課が常に最新のデータを入れてくれているためです。このデータは幹部会義や科長会議、科別の管理会議でも使っています。

 このようにデータを院内でオープンにしているのは、「常に見えるようにしてもらいたい」という要望があったことが一つ。また、診療科別の課題を全職員で共有することや、そうすることで診療科の科長に常に自分たちの診療科の課題をデータで把握しておいてもらいたいからです。人の入れ替わりがあっても、常にデータがオープンになっていれば、課題を一から探り始めるというようなステップも不要になります。

病院長が活用すべき5つの理由

――素晴らしいですね。先生ご自身もご活用いただいているとのことですが。

 はい、私は主に診療科別の管理会議向けの資料を作成するのに活用しています。

 これまでの診療科別の現況報告は、管理会議で年間1回くらいの報告でした。報告内容も自分達が見えている部分のみに焦点が当てられた取り組み報告がメイン。これでは本質的な課題解決にならないことに気づき、本会議を病院長からの情報発信の場に改めました。管理会議はこれまで、隔週で開催しており、今年度からは毎週開催になっています。年を追うごとに検討対象部署が増え、1回1時間、隔週で複数科では一診療科あたりの検討をじっくりできないためです。管理会議では、私が病院ダッシュボードχを使って資料を作り、「客観的にこうなんだけど、こうできませんか」というやり取りをしています。

 2015年後半の当初は、疾患別に平均在院日数や医療資源投入量などをベンチマーク分析する「ケース分析」の画面を各科長に見せるくらいでした。今では管理会議前にじっくりと病院ダッシュボードχで診療科の課題を探り、資料を作成します。資料作成は最初こそ時間を要しましたが、今は病院ダッシュボードχのありとあらゆる分析結果を貼り付けられる資料のフォーマットがあるので、すぐに資料は作成できます。作成した資料を管理会議へ持っていき、科の報告を受けた後に、資料を見せながら何かデータで問題あれば、それを提示していく、という進め方です。

――ご自身で資料を作成されるのには、何か特別な理由があるのですか。

 一見、「どうして病院長がそんなことに時間をかけるのか?」とも思われるかもしれませんが、これをすることの改善効果は計り知れません。

 まず、やはり自分で資料を作成すると、課題の理解が深まります。診療情報管理課に任せるのが一般的かもしれません。仮に、診療情報管理課が結果的に私が作った資料と同じ資料を渡してくれても、「この科の問題は何か」と探りながら自分で作ったものと比べると、その後の課題の把握において、雲泥の差が出ます。

 次に、「どの情報を出して、どの情報を出さないか」ということを考えて資料を作成できることも大きいです。診療科によっては、病院ダッシュボードχを通じて、課題がいくつも判明します。それを一気に全部出しても、反発されるのは目に見えています。そのほかの細部にまで気を使っているので、良いところと悪いところを出して緩急をつけるさじ加減を考えて展開するという意味もあるのです。毎回、素晴らしい点と次回までに検討してもらいたい点を箇条書きにして資料のまとめとしています。

 さらに、病院経営において、この科のどの部分を攻めるべきか、という経営者としての狙いもあります。そこもしっかりと伝えていきたい。

 加えて大きいのは、病院長が作った資料ということで、説得力があり、医師の反応や納得感も違います。

 そして最も重要なことは、自分で病院ダッシュボードχを見て、何度も何度もデータを検証していくと、これまでに気づかなかった問題に気がついたりなど、課題が整理されてくるのです。

 ここまでのことを診療情報管理課の職員に求めるのは難しいでしょうし、特に最初の頃では不可能だったと思います。データ分析のマニアになることが目的ではなく、重要で核心を付く大きな部分の課題を探り、解決策の方向性が見えさえすればいいので、個人的には病院長こそ病院ダッシュボードχを使うべきと感じています。

根付いてきた改善風土

――作成された資料の効果はいかがでしたか。

 管理会議をやればやるほど、改善していきました。今では診療科だけではなく、看護部門、薬剤部門、栄養部門などでも同様の手法で病院ダッシュボードχを活用しています。

前田病院長

 ここ最近の流れとしては、副病院長や一部の診療科の科長などが、「自分でも病院ダッシュボードχを見たい」と言うようになってきて、管理会議の前に自分たちで病院ダッシュボードχを見て、私より先に分析して資料を作成する科も出てきました。

 ただ、最近はどの診療科も私が示す資料を見て、「いかに改善するか」という姿勢で臨むようになってきています。

――ほかにはどのように活用されていますか。

 医療材料の購入価格をベンチマークできる「材料ベンチ」も良く使っています。民間病院や自治体病院など設立母体別にベンチマークできるところがいいですね。

松木理事長(中央)と塚越(右)、GHC代表の渡辺(左)

 看護必要度のデータ精度の確認や重症患者割合が分かる「看護必要度分析」も頻繁に管理会議で使っていますし、看護部門の会議でも重宝しています。

 最近では「マーケット分析」に追加された、周辺のクリニック別に紹介患者の入院移行率などを確認できる「地域連携分析」がとてもいいですね。各診療科の評判もすこぶるよく、これがあれば今後の集患活動は、ただ単に「頑張れ!」ということではなく、何をどうすればいいのかをデータで示せるようになります。集患のため闇雲に周辺クリニックへ挨拶回りに行ったり、「お得意先」と思っていても実はそうではなかったりするようなことは、大きな時間と労力のロスでした。集患するためには連携が重要になるので、この機能はまさに宝の山で、今後は必需品になるのではないでしょうか。

 ほかにも「手術分析」の曜日別稼働率や手術と手術の間の空き時間を示す「Turn Around Time」なども欠かせないし、数え出すと切りがないです。その年や時期によっても色々な使い方がありますし、診療科によっても求めるデータは異なりますし、同じ診療科でも毎回、必要なデータは変わります。ですから、当面は私が中心になって使っていこうと思っています。

――本当にフル活用いただけており光栄です。最後に一言いただけますでしょうか。

 PDCAを高速で回すことを繰り返し、「急性期らしさ」を追求し続けることが、これからの急性期病院にとって欠かせないことだと感じています。病院ダッシュボードχはそれをするために最も適したツールなのではないでしょうか。

――本日はありがとうございました。


塚越 篤子(つかごし・あつこ)

コンサルティング部門シニアマネジャー。看護師、助産師、経営学修士(MBA)。10年以上の臨床経験、医療連携室責任者を経て、GHC入社。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。全国の病院改善事例多数。若手の育成や人事担当なども務める。「LEAP JOURNAL」編集長。